省エネ計算は外注も
鶴崎さんと足立さんも自社で省エネ計算をしていますか。
鶴崎 当社はすべて外注です。おそらく多くの工務店がそうだと思いますが、当社がオファーを受ける案件の大半は他社と競合です。建て主は数社からプランや見積もりの提案を受け、発注先を選ぼうとします。受注が不透明な段階で、外皮計算をして省エネ性能を提示するのは、私を含め3人の設計者でやりくりしている当社としては厳しいものがあります。そのため、当初段階では基本プランと概算見積もりを提示しつつ、使用する断熱材や窓の種類、性能などを説明します。受注が決まれば、実施設計と並行して詳細の省エネ計算を外注します。
足立 当社も外注しています。同じように手間と時間を掛けられる余裕がありません。
省エネ計算を外注する場合、どのようなところに頼むのですか。
池田 いわゆる長期優良住宅や認定低炭素住宅などの申請業務をサポートする会社です。当社は3社ほどと付き合いがあり、各社の業務の混雑状況などを見ながらプロジェクトごとに外注します。
足立 当社が頼むのは、JBNの地域連携団体で、私が理事を務める「ちば木造建築ネットワーク」を通じて知り合った設計事務所です。もう気心が知れているので、温熱性能も構造計算もその事務所にお願いしています。
鶴崎 当社が利用しているのは、省エネや構造の計算、各種の適合証明や申請関係の業務などを総合的に手掛けている設計事務所です。多くの工務店や建売住宅会社なども利用しているようで、工務店などの要望に対する提案もしてくれます。
そうした外注費は、最終的には建て主に請求できるのですか。
足立 負担していただきます。そうした業務は工事契約後になるので、契約前に明細を出して説明し、理解を得ています。
鶴崎 当社もいただきます。建築基準法などに関わる設計費や図面作成料、監理費、建築確認申請などの業務は、それぞれの項目を立てて工事契約金額に含めます。それ以外の長期優良住宅やフラット35Sなどの作業や申請に伴う費用は、あらかじめメニューを提示して負担してもらいます。
池田 当社も建て主に負担してもらっています。ただ、当社の場合、設計・施工の住宅でも、設計業務と工事請負は契約を分けています。設計契約の中で、オプションとして長期優良住宅や認定低炭素住宅といった項目を立てて費用を提示します。工事請負契約は、設計が終わってから結びます。
建て主はそうした費用負担を受け入れてくれますか。
足立 そのあたりは問題ありません。
鶴崎 悩ましいのは、長期優良住宅を標準仕様のうたい文句に掲げて、それに伴う費用も含めたパッケージで金額を提示する競合他社が少なくないことです。実際には工事金額などに含まれているのに表面的には見えないわけです。そのため、当社がオプションで提示すると、「長期優良住宅は付いていないのか」と聞かれることもあります。
省エネ計算の扱い方は異なりますが、それぞれに長期優良住宅レベルの省エネ仕様は持っているわけですね。みなさんの活動エリアは、省エネ地域区分の5地域(我孫子市)か6地域(狛江市、西東京市)ですが、外皮の標準仕様はグラスウールと、Low-E複層ガラスの樹脂複合アルミサッシですか。
池田 東京の住宅の場合、準防火地域が多いこともあり、大半は自動的に樹脂複合サッシになります。その時点で開口部の熱貫流率(U値)は2.33W/m2・Kを確保できます。外壁も防火の問題などから高性能グラスウールが標準です。それらを使えば、たいてい外皮平均熱貫流率(UA値)は0.5~0.55W/m2・Kの範囲に入ってきます。
鶴崎 当社も都内が多いこともあって、ほとんどの住宅で開口部はLow-E複層ガラスの樹脂複合サッシ、外壁は高性能グラスウールを使っています。
そういう標準仕様をグレードアップするケースもありますか。
足立 あります。外壁の断熱材よりも窓の性能を上げるほうが効率的です。例えば、複層ガラスをトリプルガラスに換えれば性能値はぐんと上がります。
池田 外壁の断熱材を厚くするために細かい計算をするより、納まりを工夫して窓の性能を上げるほうが早いですよね。