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 2021年4月から非住宅建築物の省エネ基準適合対象が中規模建築にも広がり、省エネ適合性判定(省エネ適判)が義務付けられる予定だ。適判対象の建築で経験を積んできた小堀哲夫氏に、設計のカギや最近の省エネ建築の潮流を聞いた。

小堀 哲夫|Tetsuo Kobori 1997年法政大学大学院工学研究科 建設工学専攻修士課程(陣内秀信研究室)修了。久米設計に入社。2008年小堀哲夫建築設計事務所設立。2017年「ROKI Global Innovation Center –ROGIC–」で日本建築学会賞、JIA日本建築大賞を同年にダブル受賞。19年に「NICCA INNOVATION CENTER」で二度目のJIA日本建築大賞を受賞する(写真:大久保 惠造)
小堀 哲夫|Tetsuo Kobori 1997年法政大学大学院工学研究科 建設工学専攻修士課程(陣内秀信研究室)修了。久米設計に入社。2008年小堀哲夫建築設計事務所設立。2017年「ROKI Global Innovation Center –ROGIC–」で日本建築学会賞、JIA日本建築大賞を同年にダブル受賞。19年に「NICCA INNOVATION CENTER」で二度目のJIA日本建築大賞を受賞する(写真:大久保 惠造)
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これまでに省エネ適判の義務付け対象となる建物をいくつか設計してきました。設計者として省エネ適判にどのような印象を持っていますか。

 まず、意匠と省エネ性能との関係で言うと、開口部のガラス選定の難しさがあります。省エネ基準の適合性は、ガラスの性能に大きく左右されます。性能確保のために多くの建物で使われているのがLow-E複層ガラスです。

 悩ましいのは、その色と性能です。性能が高くなるほどLow-E複層ガラスは色が強くなり、ギラギラした感じになります。それをクライアントに提示すると、「もっと他の色のガラスにしたい」と要望されることが多々あります。私も含め多くの人たちが、ガラスは透明なものを選びたがるのです。しかし、省エネ適判を前提に、一定の省エネ性能を持たせて設計した後、ガラスを変更するのは容易ではありません。色はメーカーによっても違うので、施工者の要望でメーカーを変更する場合、性能が変わってしまう問題もあります。

 私の場合、設計図書の特記事項で、確保すべきガラスの性能を明記したうえでメーカーも指定していますが、ガラスを巡るこうした色と性能の問題は毎回のように起こります。