光熱費が3分の1に
HOWAビル津中央のZEB改修の効果はいかがですか。
園田 テナント部分の光熱費は概ね3分の1に減っているというデータが出ています。
その分、例えば改修コストの一部をテナント企業に負担してもらう「グリーンリース」のような方法はあり得たのでしょうか。
園田 難しいでしょうね。まず、供給と需要の関係があります。首都圏などに比べてオフィス市場が小さい津市でテナントにコストの負担をもちかけたら、「それなら別のビルに移る」と言われてしまうかもしれません。また、例えば照明をLED化する費用の一部をテナントに負担してもらった場合、そのテナントがビルを退去する際に負担分をどうするかという問題も生じます。
それでもZEB改修に踏み切りました。ビルオーナーにとってZEB化のメリットをどのようにみていますか。
園田 直接的な恩恵はあまり考えられません。今回は共用部のLED化は既に実施済みだったので、ZEB改修のイニシャルコストをランニングコストで回収することも難しい状況でした。補助金がなかったらZEB化は厳しかったでしょう。
むしろ実感しているのは、BELSという第三者評価を受けることによって得られる当社のブランド価値の向上です。改修後には、地元の金融機関など環境意識の高い企業から、当社の取り組みが先進的だという評価を聞くようになりました。要請に応じてセミナーの講師を社員が務めたり、経営者が賞を受賞したりしています。工事費は高くなりますが、差額分を広報コストととらえれば決して無駄ではありません。
ZEBはテナントビル運営の考え方を変えていくのでしょうか。
園田 例えば設備を更新する際にできるだけ安価に済ませる考え方もあります。その一方で、より高い付加価値を目指す方法も選択肢になるはずです。
内外装は豪華だけれども快適性が低い外見重視のビルと、高い省エネ性能を備えた中身重視の快適なビルのどちらが良いか。外からは見えない部分の価値を踏まえ、テナントに提供するメリットを高めることも必要になってくるでしょう。