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 環境共創イニシアチブ(SII)は、経済産業省と環境省の連携事業として執行した2019年度ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業における採択事業の傾向を分析している。その内容をリポートする。

 2019年度ZEB実証事業の交付決定事業件数は、経産省9件、環境省45件の計54件。このうち、創エネルギーを加味した基準1次エネルギー消費量からの削減率100%以上を達成した「ZEB(ゼブ)」は6件ある。いずれも建物用途は「事務所」だった。

 下のグラフは、54件において、単位面積あたりの設計1次エネルギー消費量(パソコンやプリンターといったOA機器、冷蔵ケースなどによる「その他1次エネルギー消費量」を含まず)と創エネルギー量の関係を示したもの。事務所の設計1次エネルギー消費量は400~600MJ/m2年に集まる傾向にある。18年度は500~700MJ/m2年が中心だった。

設計1次エネルギー消費量と創エネルギー量(単位面積あたり)の関係を示す。設計1次エネルギー消費量はパソコンやプリンターといったOA機器、冷蔵ケースなどによる「その他1次エネルギー消費量」を含まない(資料:環境共創イニシアチブ)
設計1次エネルギー消費量と創エネルギー量(単位面積あたり)の関係を示す。設計1次エネルギー消費量はパソコンやプリンターといったOA機器、冷蔵ケースなどによる「その他1次エネルギー消費量」を含まない(資料:環境共創イニシアチブ)
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 「小・中・義務教育学校」「大学・各種学校等」「図書館・博物館」は、採択数は計6件と少ないが、19年度はすべての事業で事務所と同等か、それ以下の設計1次エネルギー消費量となっている。いずれも約500MJ/m2年の創エネルギー量があればZEB化が可能になる。

 19年度ZEB実証事業に関する資料は、SIIのホームページからダウンロードできる。

 18年末に文部科学省が発表した公立学校施設における再生可能エネルギー施設などの設置状況を調査した結果をみると、18年5月時点で、公立小中学校の太陽光発電設置率は約31%だった。

 文科省は、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の環境教育への活用方策などで具体的、専門的な検討を行うため、19年1月から「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」において「環境教育に活用できる学校施設検討部会」を設置。20年3月には同部会が中心となり、「環境を考慮した学校施設づくり事例集−継続的に活用するためのヒント−」を公開した。太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー設備導入にも言及している。事例集は文科省のホームページからダウンロードできる。

文部科学省が2020年3月に公開した「環境を考慮した学校施設づくり事例集−継続的に活用するためのヒント−」(資料:文部科学省)
文部科学省が2020年3月に公開した「環境を考慮した学校施設づくり事例集−継続的に活用するためのヒント−」(資料:文部科学省)
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