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 住宅会社のエコワークス(福岡市)がテナントとして入居する賃貸ビルをZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に改修した。改修コストはテナントが負担し、原状回復も求められない。地域を基盤に活動する住宅会社にとってZEBのメリットは何か――。前編に続き、ZEB改修の意義を関係者に解説してもらう。

ZEBに改修したエコワークス新本社(福岡市)の外観(写真:守山 久子)
ZEBに改修したエコワークス新本社(福岡市)の外観(写真:守山 久子)
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エコワークスの新本社は、1987年に完成した2階建て・鉄骨造の建物をZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に改修したものですね。

小山貴史氏(エコワークス代表) 当社は住宅会社なので、あくまでもビジネスとしてZEBに挑戦していきたい。そのために大切なのは、過剰投資にならないようにバランスをとることです。今回は共同設計者である三菱電機住環境システムズからの提案を基に、ZEBなど省エネ計画の支援で多数の実績を持つイエタス(東京・千代田)の協力を得て仕様をそぎ落としていきました。

 ZEBの計画をトータルでみられる専門家は意外と少ないという印象を受けています。住宅でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー住宅)をつくる際に「コストパフォーマンスの良さ」を目指すのは当たり前ですが、非住宅建築物ではそこまで知見が集約されていないのではないでしょうか。今回は一部のエアコンを天井付けタイプから壁付けタイプに変更するなどしてコストダウンを図りましたが、結果的には性能面で予想以上の余裕がありました。本当は、もっとZEB基準ギリギリの仕様を狙いたかったのですが……。

西山博氏(イエタスマーケティング開発部長) ZEBの計画では、計算上のエネルギー消費量を削減するだけでなく、実際に執務する人にとっての快適な環境づくりが大切になります。設備による省エネに頼り過ぎないことも重要です。

 一般的な設備設計では、使用する人数を前提に用途や面積に応じて部屋ごとのエネルギー消費量を算出します。ここで、実際の「使われ方」に配慮して適正な設備容量をいかに考えていくか。私自身の経験を踏まえ、設備設計者ともコンタクトを取りながら施設の用途、規模などに応じて適切なバランスを判断しています。

 また、最も力を入れているのはエネルギーマネジメントを追跡できるようにすることです。「エネルギー消費量をこれだけ減らせた」というエビデンスを使用者と共有しながら、運用を通してビル全体の省エネ化を進めていくのです。

ZEBを目指すと設備が過剰になりやすいという指摘をよく聞きます。

西山 設備設計者はエアコンが効かないことや換気設備の結露を心配しがちで、それ自体はおおむね正論だと思います。ただし、意匠設計者が設備設計者任せにしてよいというわけではありません。設備設計の内容を見極められるように知識を高めていくことが大切でしょう。