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分棟配置で採光や通風を確保

 延べ面積995m2の校舎棟は、切り妻屋根を架けた6つの棟で構成している。このうち3つの棟は運転練習場に面した西側に直列に並べ、残る3つの棟を東側に並列させた。全体ではL字形の建物配置とし、各棟をL字形の廊下で結んでいる。棟と棟の間の下屋部分にはトイレなどを設けた。

1階平面図(資料:かなで建築設計)
1階平面図(資料:かなで建築設計)
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 切り妻屋根は梁間の両端で支持する張弦梁の架構とし、室内側に柱のないスパン8.4mの大空間を確保した。将来の保守と更新のしやすさを考えて天井を張らず、暖冷房や換気などの設備機器を露出させた。登り梁(のぼりばり)の集成材を除き、躯体には市場に流通する製材を用いた。架構のつくりも使用する木材の寸法もできるだけ統一し、工事費と工期を抑えた。

待合室から事務スペースを見る。屋根架構は、登り梁と丸構ブレースで構成した梁間8.4mの張弦梁で構成(写真:吉田 誠)
待合室から事務スペースを見る。屋根架構は、登り梁と丸構ブレースで構成した梁間8.4mの張弦梁で構成(写真:吉田 誠)
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室内に露出した空調設備と配管(写真:吉田 誠)
室内に露出した空調設備と配管(写真:吉田 誠)
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 「むだに壁を厚くしないために、外壁の断熱材は120mm角の柱の範囲で納まる105mm厚さの高性能グラスウールを採用した。屋根に設けた厚さ60mmのフェノールフォーム断熱材、基礎に施した厚さ50mmの押し出し法ポリスチレンフォーム断熱材を含め、基本的にこの地域における省エネ基準レベルの仕様としている」(かなで建築設計の須田和正代表)

 窓は、アルゴンガス入りのLow-E複層ガラス、枠部分はアルミサッシを採用した。軒より下側には住宅用、高窓や排煙窓にはビル用のサッシを使い分けている。「建物を分節させた構成は、断熱面では不利になるが、多面からの採光を意識して設計した。中間期には通風を確保して空調負荷を低減させることも考えている」(須田代表)

断面詳細図(資料:かなで建築設計)
断面詳細図(資料:かなで建築設計)
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下屋部分の廊下。窓は全てLow-E複層ガラスのアルミサッシ(写真:吉田 誠)
下屋部分の廊下。窓は全てLow-E複層ガラスのアルミサッシ(写真:吉田 誠)
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 災害時に電力供給可能な防災拠点とするために、建物には太陽光発電設備と蓄電池を設置した。太陽光発電パネルは西側の棟に160枚を並べ、合計38.88kWの容量を確保した。発電した電力は全て自家消費する。太陽熱給湯も導入し、二輪教室に用意したシャワー室で利用できるようにした。

 これらの結果、外皮の断熱性能を示す「PAL*の削減率(BPI)」は0.66、1次エネルギー消費量の削減率は再生可能エネルギーを含む場合に91%(除く場合は68%)になった。

 土浦北インター自動車学校にとって、校舎棟の建設は計画の第1期に当たる。IACがこの自動車学校の敷地・建物や経営権を買い取ったのは18年2月のこと。旧自動車学校の時代から通学による教習を実施してきたが、今後は宿泊合宿型の教習にも対応できるようにする。そのため22年の春から夏の完成をめどに、既存の旧校舎を建て替えて、レストランや合宿所を新設する予定だ。いずれも木造のZEBとすることを考えているという。

建築概要
土浦北インター自動車学校 校舎棟

  • 所在地:茨城県土浦市
  • 地域区分:6地域
  • 建物用途:事務所等
  • 構造・階数:木造・地上1階建て
  • 延べ面積:995m2
  • 発注者:インター・アート・コミッティーズ
  • 設計者:かなで建築設計
  • 施工者:ナイス
  • 完成:2020年12月
「土浦北インター自動車学校 校舎棟」のZEBデータ(資料:環境共創イニシアチブ)
「土浦北インター自動車学校 校舎棟」のZEBデータ(資料:環境共創イニシアチブ)
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