三菱電機が神奈川県鎌倉市に建設した情報技術総合研究所のZEB関連技術実証棟「SUSTIE」は、ハイレベルのZEBでは珍しい4階建ての建物だ。商用化前の技術を含めた同社の最新設備を導入し、使用しながら効果を検証していく。前編に続き、関係者に計画のポイントを聞いた。
「SUSTIE(サスティエ)」は、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)シリーズの中で最もハイレベルな「1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナス」の建物です。
浮穴朋興氏(三菱電機情報技術総合研究所監視メディアシステム技術部長):SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)投資などに対する社会の盛り上がりを踏まえ、最高性能のZEBを目指しました。研究部門として、省エネルギーや居住性の良さといった不動産の性能価値を定量的に高める技術を備えておきたいと考えました。
4階建て、延べ面積6456m2の事務所ビルで、ハイレベルのZEBを実現できたポイントは何だったのでしょうか。
浮穴氏:非常に高い性能目標でした。ただ、私たちはまず早稲田大学創造理工学部の田辺新一教授などの協力を得ながら自社の設備機器を用いて大まかな設備計画を検討し、これなら可能だという手応えを得ていました。そして、設計を依頼した三菱地所設計と互いにアイデアを出し合いながらプロジェクトを進めました。
ポイントは、従来のような「事後対処」ではなく、シミュレーションによる「事前予測」に取り組んだことです。新たに開発したシミュレーション技術を組み込んだ監視システムを構築し、エネルギー消費量と快適性を1年先まで精密に予測して目標値を設定しています。
ほぼ全ての設備に当社製品を使っているため、細かい性能値に基づいて予測できる点もメリットでした。ビル全体ではなく部屋単位で予測し、使用者が気づかない程度の温度調整などを積み重ねていく。今までのように運用しながら人間が調整していく方法に比べてずっと細かい制御を可能としています。