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コロナ禍とエネルギー消費量

快適性を高める工夫も施していますね。

浮穴氏:窓まわりに自然通風の取り入れ口を2種類用意しています。内外の室内環境に応じて自動開閉する共用スペースの換気口と、手動で開閉する実証室(執務スペース)の窓です。窓については、外部の温度や湿度が快適な状態のときに青く点灯するサインを設置し、窓を開けるタイミングを可視化しました。

手動開閉のサイン。窓を開けられる状態になると青く点灯する(写真:三菱電機)
手動開閉のサイン。窓を開けられる状態になると青く点灯する(写真:三菱電機)
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 「集中」をテーマとした4階の実証室では、天井に放射冷暖房パネルを組み込んでいます。吹き出し口がなく静かで風も感じないので、作業に集中しやすいと好評です。

放射冷暖房は立ち上がるまでに時間がかかるのではないでしょうか。

浮穴氏:その対策のために、天井パネルに小さな穴を多数設け、パネル背後の冷暖な空気が室内ににじみ出るようにしています。

新型コロナウイルス禍で出社人数を減らしている影響はどうですか。

浮穴氏:消費エネルギー量に対する人の影響は、実はそれほど大きくありません。現在は30~40%の出社率に抑えていますが、試算してみるとエネルギー消費量に与える影響は年間で1%程度にすぎません。人が減ることで内部発熱が減少する影響は、冬と夏で相殺される格好です。

利用者の健康に関する米国の認証制度「WELL Building Standard(WELL認証)」の取得も目指しているそうですね。

浮穴氏:省エネ化によって建物内の快適性が落ちるのではないかと、いまだに誤解されがちです。ZEBであっても従来の建物より快適になることを示したいと考えました。さらに、省エネと快適性がトレードオフとなる場面もあるのでその最適なバランスを見極めたいという狙いもあります。

2階の共用スペース「HUB」。室内に壁面緑化や階段を組み込んで健康増進を図る(写真:三菱電機)
2階の共用スペース「HUB」。室内に壁面緑化や階段を組み込んで健康増進を図る(写真:三菱電機)
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省エネと快適性の両立が難しかったのは具体的にどこでしょう。

浮穴氏:執務環境の快適性を求めると、照明や空調の設計時に極限まで省エネできないという制約が生まれます。照明の高演色性やまぶしさの低減を求めて高演色LEDや間接照明を採用すると、照度はどうしても低下します。ここで照度を上げようとすると消費電力は増えます。またWELL認証では換気量を一般的なオフィス以上に設定するよう求められますが、それによって空調負荷は高まります。

 その点、例えばタスク&アンビエント照明の採用は効果的でした。業務ではパソコン画面を見ることが中心になるので、部屋全体が多少暗めでもほとんど気にならず、タスク照明もほとんど使いません。大まかには、1次エネルギー消費量の削減率106%のうち8%分を、居室のLED照明化やタスク&アンビエント照明の導入などにより達成しています。

三菱電機情報技術総合研究所の浮穴朋興・監視メディアシステム技術部長(写真:守山 久子)
三菱電機情報技術総合研究所の浮穴朋興・監視メディアシステム技術部長(写真:守山 久子)
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