奥村組は同社技術研究所(茨城県つくば市)の全体リニューアル計画に合わせ、管理棟をNearly ZEBに改修した。築30年超の4階建て免震建築をどのように高性能化したか。前編に続いて関係者が計画のポイントを語る。
今回ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)改修した管理棟は、延べ面積1330m2、4階建ての鉄筋コンクリート造です。なぜ、ZEBシリーズで上から2番目のランクに当たるNearly ZEBを目指したのでしょうか。
川井伸泰氏(奥村組技術研究所長):ZEBは単なる要素技術の組み合わせではなく、建物全体で構築する総合技術。まさに私たち建設会社が追求していくテーマです。実際に利用するシーンでは性能と快適性の両立が求められるので、多様なニーズを統合した建物の完成形としてZEBの在り方を提示することは必須でした。
ただし改修にはさまざまな制約があり、「1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスになるZEB」の実現は難しい。ここでは特殊なことはせず、無理をせず、それでも「改修でNearly ZEBにできる」という汎用性の高い提案につなげられるようにしたいと考えました。
岩下将也氏(奥村組技術研究所環境研究グループ主任研究員):延べ面積に対して屋根が小さい4階建ての改修の場合、現状ではNearly ZEBが技術的に最先端のレベルといえます。
改修設計に際して、温熱性能面ではどのような工夫を施しましたか。
佐藤彩加氏(奥村組東日本支社建築設計部設計3課): 管理棟ではエネルギー消費量の多くを空調と照明が占めます。そのため外皮性能の向上、空調設備の削減、タスク&アンビエント照明の導入を中心に取り組みました。外壁は厚さ25mmのウレタン断熱を吹き増し、既存の断熱と合わせて厚さ50mmにしました。主要な開口部は単板ガラスをLow-E複層ガラスのアルミサッシにカバー工法で変更しました。
こうした仕様はどのように決めたのでしょうか。
佐藤氏:設計の過程では、断熱材を50mm追加して合計厚さを75mmにする案も検討しました。開口部についても、複層ガラスだけでなくトリプルガラスやエアフローウインドウを導入する案も考えました。断熱の厚さ、開口部の仕様それぞれを組み合わせてシミュレーションしたところ、例えば複層ガラスをトリプルガラスに変更してもエネルギー消費量は数%しか変わらないことが分かりました。費用対効果を勘案して現状の組み合わせを採用しています。
設備と外皮性能の兼ね合いはどう考えましたか。
坂﨑隆氏(奥村組東日本支社建築設計部設備課課長):設備設計においては、容量をワンサイズ落とした機種にできるかどうかが判断の分岐点になります。例えばビルマルチエアコンの容量のランクから逆算するなどして、建築側と調整しました。
ZEBのエネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)の計算で評価されない技術も一部導入しています。一例が3階の自然換気窓で、温湿度、風速、雨量を感知して、外部空間が快適な条件になると自動で開く仕組みとしています。自然換気窓を導入していない4階と比較検証できるようにしました。