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 熊本県内で初めて、1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスとなるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の評価を得た木造の保育園だ。地元の住宅会社が、普段手掛ける家づくりの延長で建設した。

 木造の戸建て住宅とほぼ同じ技術と仕様でつくったZEB。それが、2020年9月に熊本県大津町で完成した「NPOこどもサポート・みんなのおうち」だ。延べ面積280.82m2の建物に、特定非営利活動法人「NPOこどもサポート・みんなのおうち」の事務所と同法人が運営する小規模保育園が入る。

NPOこどもサポート・みんなのおうちの西側外観(写真:エコワークス)
NPOこどもサポート・みんなのおうちの西側外観(写真:エコワークス)
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 木造在来工法による平屋の建物は、熊本県内で初めてBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)で「1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナス」となるZEBの評価を取得した。設計と施工を担当したエコワークスの岡本博執行役員部長は、「日頃の家づくりの延長線上で計画した。玄関の自動ドア以外は住宅用の建材と設備を用いている」と話す。

 エコワークスは、福岡県と熊本県を拠点とする住宅会社だ。主に木造住宅の新築を手掛け、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー住宅)が新築件数の9割を占めている。20年2月に移転した福岡市の新社屋では、築30年超の鉄骨造ビルをZEBに改修した経験を持つ。これらの実績を足掛かりに、同社にとっては初めての新築ZEBに挑戦した。

 建物は、ほぼ南に正対させて配置した。園庭のある南側に面して保育室とオフィスを設け、その間を幅広い廊下とウッドデッキでつないだ。北側には、ミーティングルームや印刷室、応接室などを並べている。

1階平面図(資料:エコワークス)
1階平面図(資料:エコワークス)
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 建物の架構には集成材を用いず、主に地元の熊本県産材を使用した。柱や梁(はり)を露出させ、アカマツのムク材を床に敷くなど、木の肌合いを身近に感じさせる室内空間としている。

 特に木造在来工法らしさを醸し出すのは、1辺7.6mの正方形平面を持つ保育室とオフィスだ。一般に流通する製材を用いた梁は、この大スパンを飛ばすことができない。そこで保育室とオフィスの中央に柱を立て、四方に延びる梁と接続させた。接合部の断面欠損を勘案し、中央の柱の断面寸法は7寸(210mm)角としている。まさに大黒柱だ。

玄関ホールから保育室方向を見る。右手の半透明の間仕切りの奥は法人のオフィス(写真:エコワークス)
玄関ホールから保育室方向を見る。右手の半透明の間仕切りの奥は法人のオフィス(写真:エコワークス)
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保育室。中央に大黒柱が立ち上がる(写真:エコワークス)
保育室。中央に大黒柱が立ち上がる(写真:エコワークス)
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 断熱の方法も、同社の家づくりに準じた仕様を採用した。断熱材は、天井に厚さ180mm、外壁に厚さ105mmの高性能グラスウールをそれぞれ施した。窓は、アルミ樹脂複合サッシとLow-E複層ガラスを組み合わせた。高い温熱性能を備えた木造住宅では珍しくない仕様だ。再生可能エネルギーを含む1次エネルギー消費量の削減率は114%(再生可能エネルギーを除くと56%)となった。