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夏を主眼にしたパネルの傾斜角

 太陽光発電パネルは、気象の特性を踏まえて配置した。

 屋上には、積雪時対応と発電効率を考慮して、23.4kWの太陽光発電パネルを20度の傾斜角で設置した。年間を通してまんべんなく太陽光が得られる地域であれば傾斜角をもっと大きくするほうが発電効率は高まるが、福井市では積雪のため冬は多くの太陽光発電を期待できない。そこで、太陽高度が高い夏季に効率的な発電が可能となる傾斜角とした。

 屋上の太陽光発電パネルで足りない分は、壁面に設置した2.7kWのパネルで補う。南面のバルコニー上部に、室内への採光を妨げないように透過仕様の太陽光発電パネルを設置した。傾斜角70度で取り付けたパネルは両面発電タイプとし、パネルの下にあるライトシェルフからの反射で裏面の発電量を増やす効果を期待する。併せて11.2kWhの蓄電池も設け、停電時などに利用していく。

南面バルコニー上部に設置した太陽光発電パネルとライトシェルフ(写真:守山 久子)
南面バルコニー上部に設置した太陽光発電パネルとライトシェルフ(写真:守山 久子)
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 設備面では、熱源や空調のシステムを中心に多様な技術を組み合わせた。

 例えば3、4階の事務室には、床吹き出し放射空調を導入した。送風すると膨らむ「ソックダクト」を二重床内に設置。冷暖房した空気をダクトから二重床内に吹き出し、穴の空いた下地材とカーペットを通して室内側にしみ出させる。冷暖房の空気の動きをあまり感じさせずに、心地よく室温調整する仕組みだ。

 ダクトはループ状に配し、ダクトの吹き出し穴から室内中央側へ集中的に空気を吹き出すようにした。室内中央はデスクなどを配置する居住エリアとなるため、より空調効率が高まる。運転モードも「停止」「ウオーミングアップ&24時間換気」「冷房時(除湿と冷却)」「暖房時(加湿と加温)」など8パターンを用意し、室温や利用状況に応じて最適化した空調を目指す。

3階事務室。カーペットの色が薄い中央部分をソックダクトで集中的に冷暖房する(写真:熊谷組)
3階事務室。カーペットの色が薄い中央部分をソックダクトで集中的に冷暖房する(写真:熊谷組)
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床吹き出し放射空調を採用した事務室の床。穴の空いた金属製下地板とカーペットを通して、冷暖房空気が緩やかに室内側にしみ出る(写真:守山 久子)
床吹き出し放射空調を採用した事務室の床。穴の空いた金属製下地板とカーペットを通して、冷暖房空気が緩やかに室内側にしみ出る(写真:守山 久子)
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 空調機は、温度と湿度を分離して熱交換する潜熱顕熱分離方式を採用した。熱交換のコイルを直列に接続し、温度差の大きい冷温水を確保するなどして高効率化を図っている。換気については、執務スペースで回収した空気を全熱交換したうえで非居室の廊下へ流し、トイレなどから排気する「カスケード換気」を導入。空調空気を効率的に活用する。

 照明は事務室でのタスク&アンビエント方式を採用したほか、制御方式を細分化した。少人数の入室では全点灯しないようにした人感センサーと昼光センサーを組み合わせるなどし、人数に対応した制御を試みる。

 建物の省エネ性能に関する最終的な設計値は、外皮性能を示すBPI(PAL*の削減率)が0.63、BEI(1次エネルギー消費量基準)が0.17となった。ライトシェルフや潜熱顕熱分離空調、カスケード換気など、ZEBのエネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)の計算では評価されない技術も取り入れているため、実際の省エネ効果は9月の入居後に始める実測で検証していく。

 「予備実験を実施した床吹き出し放射空調をはじめ、照明など細かく制御できるシステムを導入して、快適性と省エネの両立を目指した。ただし、利用者が実際に快適と感じられるかは未知数。実測して効果を検証し、次の実践につなげていきたい」と新井部長は話す。

建築概要
熊谷組福井本店

  • 所在地:福井市
  • 地域区分:6地域
  • 建物用途:事務所等
  • 構造・階数:鉄骨造+木造(ハイブリッド構造)・地上4階建て
  • 延べ面積:1190.85m2
  • 発注・設計・施工者:熊谷組
  • 完成:2021年7月
熊谷組福井本店の申請時のZEBデータ(資料:環境共創イニシアチブ)
熊谷組福井本店の申請時のZEBデータ(資料:環境共創イニシアチブ)
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