寒冷地に合ったZEB
函館SCは南北に長い配置の建物です。ZEBとするには不利な形状ですが、そうした面は設計上どう考えたのでしょうか。
竹中氏:動線の効率性から建物配置を設定しました。また当社のブランディング上、ロードサイドからの建物の見え方も大切です。横連窓、外壁の色、サインの仕様などの基本様式を定めており、各SCはそのデザインを崩さない前提で設計を進めています。函館SCは寒冷地にあるため「断熱面では窓を少なくした方が効果的」という提案も受けましたが、あくまでもSCとしての在り方を優先しました。
土橋弘典氏(渡辺パイプ総務ユニット建築・営繕グループ建築担当):具体的には、事務所周りの外壁に厚さ130mmの硬質ウレタンフォームを吹き付けるなど寒冷地に即した断熱性を確保しました。
敷地には余裕がありますが、太陽光発電パネルは屋根だけに34kW分を設置したのですね。
児玉俊介氏(大和ハウス工業仙台支社北海道・東北設計部北海道設計課主任):地面上にパネルを置く方法も検討しましたが、結果的に屋根だけに設置しました。寒冷地の地面に架台の基礎をつくるコストや配線の長さなどを勘案すると、建物の構造体を利用して屋根に設置する方が効率的という判断です。
寒冷地の函館市と暑い地域の延岡市では、ZEBを計画する際にどういう違いがあるのでしょうか。
谷口氏:寒冷な地域では断熱性の確保が大切なのに対し、暑い延岡市では極端に冷房負荷が大きくなるので遮熱が重要になります。ブラインドの色ひとつで日射熱の影響が違ってくるので、細かい面まで配慮して設計しています。
太陽光発電については、南北の地域差はあまりありません。日射角が高い南の地域は北の地域に比べて発電効率が高くなりますが、パネル面の温度が高くなることによる効率低下も生じます。両者によって効果が相殺される格好です。むしろ晴れの日が多いか少ないかが影響します。
竹中氏:そのため、現在計画中の福井SC(福井市)のように雪が多い地域では太陽光発電パネルを設置しない形を想定しています。今後も、投資効果と費用対効果を勘案して普及しやすいZEBを目指します。
今後、どのような意識でZEBに取り組んでいきますか。
竹中氏:気候変動をはじめとする環境問題、エネルギー問題は企業が取り組むべき大きな課題です。対応策はZEBだけではありませんが、私たちも建材を扱う商社として問題解決に貢献していく責務を担っています。建材メーカーや工務店などの取引先にもZEBがメリットをもたらすことが伝われば、例えばメーカーが対応製品をつくるようになるなど動きは広まっていくでしょう。当社のZEBが、そうした動きのきっかけになればと考えています。