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 兵庫県上郡町が築35年の本庁舎を改修した。老朽化した外壁や設備の更新を主目的に据えつつ、補助金を活用してZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)への改修も合わせて実施。ZEB Readyの評価を得た。

 補助事業の採択が決まれば、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現に踏み切る──。ZEB事例でしばしば見かけるパターンだ。

 2021年1月に本庁舎をZEB改修した兵庫県上郡町も、環境省「地域の防災・減災と低炭素化を同時実現する自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」の補助金の決定を受けてZEB Ready(一次エネルギー消費量の削減率50%以上)を具体化した。改修は、プロポーザルで選定した日比谷総合設備(東京・港)と国際航業(東京・新宿)のチームが担当した。

 鉄筋コンクリート造4階建ての本庁舎は、1986年度に完成した。東側の前面道路越しに、上郡町を南北に横切る千種川が流れている。建物の正面玄関は、敷地の入り口からアプローチ斜面を登ってたどり着く2階に位置している。そのため、川側からは3階建てに見える。

上郡町役場本庁舎の東側外観(写真:上郡町)
上郡町役場本庁舎の東側外観(写真:上郡町)
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 改修のもともとの目的は、建物の老朽化対策だった。新耐震基準で建てられていることもあって耐震面は問題ないが、外装や設備の老朽化が目立ち、不具合が生じた部分をその度に直しながら使っている状況だった。

 「市の計画では本庁舎を80年持たせることとしており、これから40年以上使い続けていかなくてはならない。しかし、外壁タイルの一部に剥落が生じ、空調も故障で夏に1週間止まってしまうなど、改修が待ったなしの状態だった。財源が限られているなか、改修工事に補助金の活用は欠かせない。必要な改修を一度にできる補助金を探している過程でZEBが浮上した」。上郡町役場財政管理課管財係長の小田賢氏は、ZEB改修のきっかけをそう語る。

各階平面図(資料:上郡町)
各階平面図(資料:上郡町)
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 老朽化対策に必須となる部分を中心に改修内容を定め、ZEB Readyを実現できる仕様を設定した。

 外皮は、タイルの補修に合わせて断熱化した。タイル張りの外周部分は全て点検し、タイル落下防止処理を施した。さらに、快適な温熱環境が求められる居室まわりでは、外壁に下地処理をしたうえで厚さ70mmのポリスチレンフォームを直接張り付け、コテ塗り塗装で仕上げた。さらに開口部では、既存のサッシを生かしつつLow-E複層ガラスに取り替えた。屋根の断熱は、既存のポリスチレンフォームをそのまま使っている。

外壁タイルまわりの補修と断熱化(写真:上郡町)
外壁タイルまわりの補修と断熱化(写真:上郡町)
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改修後の外観。居室に対する断熱性の影響が小さい外部柱まわりなどはタイル張りの外装を残した(写真:守山 久子)
改修後の外観。居室に対する断熱性の影響が小さい外部柱まわりなどはタイル張りの外装を残した(写真:守山 久子)
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 設備は空調と照明を中心に刷新した。空調はヒートポンプ式のビルマルチエアコンなどに置き換えた。蛍光灯が多く残っていた照明はLEDに統一した。