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2021年3月に完成した真下公認会計士事務所(埼玉県東松山市)は、CLT(直交集成板)を用いた2階建ての ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)。前編に続き関係者が、CLT採用の狙いやZEBの効果について語る。

(写真:佐藤 嗣)
(写真:佐藤 嗣)
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真下公認会計士事務所の新しいオフィスは、CLT(直交集成板)を構造壁などに用いた木造建築です。なぜCLTでつくろうと考えたのでしょうか。

白江龍三氏(白江建築研究所):私は以前から木材活用に注力しており、設計に際してはまず木造を提案するようにしています。また今回の建物は、CLTなどを利用する計画を対象とした林野庁のJAS構造材個別実証支援事業の条件にぴたりと当てはまる規模でした。「1000m2未満の場合に最大1500万円」という補助金額で、延べ面積約350m2の建物で使用するCLTの材料費をほぼ賄えます。

 CLT工法は木材の材積が大きく、この建物の炭素固定量も約106t-CO2になります。またCLTの構造壁を内壁にも用いると高い耐震性能を得られるなど、さまざまなメリットがあります。実際、真下公認会計士事務所では現行基準の1.5倍の耐震性を確保しています。

真下和男氏(真下公認会計士事務所所長):当事務所では、これまで会計監査などの業務を通して地元の林業関係者の状況を見てきました。私自身、せっかくなら国産の木を活用したいという気持ちがありました。省エネ化のコストも含めて工事費がある程度高くなることは織り込み済みです。

真下美紀氏(真下和男税理士事務所):木造は鉄筋コンクリート造に比べて減価償却期間が短く、固定資産税が低く抑えられるなど税制の面で有利です。将来、取り壊す際の費用も比較的少なくて済み、負の資産になりにくい工法といえます。新オフィスでは事務室をできるだけ広くしたいと考えていたのですが、CLT工法で梁に集成材を使えば大きなスパンに対応できるという話も聞いたので、CLT工法で依頼しました。

 一方で、木造にすると上階の歩く音や椅子を引く音などが気になるではないかという心配はありましたが、使い始めてからは特に気になっていません。

CLTはほとんど見えない仕上げとなっていますね。

真下美紀氏:CLTの木目が強調されたようなインテリアは避けたかったので、クロス張りを希望しました。

白江氏:玄関の庇の下側をCLTの現しとして、液体ガラスでコーティングしています。あとは階段にCLTを利用しています。

庇のCLTを現しにした玄関まわり(写真:守山 久子)
庇のCLTを現しにした玄関まわり(写真:守山 久子)
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階段にはCLTをそのまま使用(写真:佐藤 嗣)
階段にはCLTをそのまま使用(写真:佐藤 嗣)
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