「清水建設北陸支店新社屋」の設計には、同社の最新技術と新しい働き方を促す仕掛けが盛り込まれている。環境面では、一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスとなるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現させた。
北陸の冬には珍しい晴天の一日、金沢市の清水建設北陸支店新社屋を訪れた。3階建ての建物の南側には、道路を挟んで市立図書館などが集まる玉川公園がある。公園側から新社屋を見ると、外に張り出した鉄筋コンクリート造の格子が、ファサードにくっきりとした影を生み出している。
2021年4月に完成した延べ面積4224m2の新社屋は、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)において一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスとなるZEBの評価を得た。冬の日射量が少ない北陸4県で最高レベルのZEBを取得した事例は2022年1月時点で5件を数えるだけで、延べ面積2000m2以上の大規模建築物では初めてとなる。
「最初から最高レベルのZEBをめざし、建築プランと各種技術を融合させた最先端のオフィス設計を試みた」と清水建設北陸支店設計部長の堀部孝一氏は話す。建物のデザインで目を引くのは、視覚的な開放性だ。大開口は熱負荷の面で不利になるが、北陸支店新社屋では南面に加え、東西面も床から天井までのガラス張りとしている。
新社屋は、1978年に完成した旧北陸支店を解体して新築した。1辺36mの正方形平面を持つ3階建て部分に、ロッカールームなどの入る小さな2階建て部分が北側に取り付く。旧支店では本館と別棟に分かれていた執務スペースをまとめ、2階に180人の支店職員ほぼ全員の執務スペースを集約した。
執務スペースでは、中央の階段を取り囲むようにグループアドレスのデスク群を並べ、打ち合わせスペースや集中できる個人席などを窓側のエリアに用意した。見学者を迎え入れる場としても機能する3階は、2階とひとつながりになった吹き抜けを囲んで会議室やプレゼンテーションエリア、ライブラリーなどを並べている。エントランスホールのある1階は、事務室、応接室、駐車場などが入る。