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パッシブとアクティブを併用

執務スペースは、36m四方の正方形平面を有しています。この条件の下、設備で導入した技術についてお話しください。

天田靖佳氏(清水建設北陸支店設計部設備設計グループグループ長):新社屋ではパッシブとアクティブの技術を併用しています。

 照明計画では、執務スペースの中央が暗くなるので、吹き抜けのハイサイドライトから自然光を取り入れました。ワークプレースの机上はアンビエント照明で300ルクス、タスク照明で200ルクスを確保する想定ですが、実際には自然光の効果によりアンビエント照明は180ルクス程度で運用しています。

 空調計画では、1年を通して15~16度程度で推移する地下水の熱量を熱源に利用しています。ベースとなる空調はフロアフロー空調とし、利用者の滞在域を効率的に暖冷房します。吹き抜け上部には集成材を現しにし、大臣認定を取得した耐火木鋼梁が架かっています。意匠と構造が一体となったこの空間を生かすためにも、空調に床を利用することはごく自然な発想でした。

 2階と3階では高さ500mmの床下スペースにファンコイルユニットを設置し、空調空気と外気処理空気とを融合した空気をカーペットから染み出させています。2階床では、冷温水配管を埋め込んだコンクリートで蓄熱する「躯体(くたい)蓄熱型放射空調(TABS)」も設置しました。これらのアンビエント空調は、冷温水とファンコイルユニットの稼働の有無、風の強弱によって4段階に調整できます。さらにタスクエアコンとして、ファン付きの吹き出し口を設けました。こちらは利用者が持つスマートフォンで、オン/オフと10段階の風量を設定できます。

躯体蓄熱型放射空調の展示(写真:守山 久子)
躯体蓄熱型放射空調の展示(写真:守山 久子)
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スマートフォンで個別操作できるファン付きの吹き出し口(写真:守山 久子)
スマートフォンで個別操作できるファン付きの吹き出し口(写真:守山 久子)
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水素エネルギー利用システムはどのような仕組みですか。

天田氏:水素製造装置、水素貯蔵装置、燃料電池を組み合わせたシステムです。

 水素貯蔵には、水素吸蔵合金に水素を吸着させる方式を採用しています。当社が産業技術総合研究所と共同開発したもので、消防法上の危険物に該当せず、常温常圧の水素に比べて1000分の1の体積で貯蔵できるのがメリットです。福島県内の卸売市場に実証実験として採用した実績がありますが、建物本体に組み込んだのは初めてとなります。

 2000kWhの水素蓄エネルギー容量のうち1000kWhは日常の電力融通に用い、土日に太陽光で発電した分も使い切り、残る1000kWhは非常時用に常時備蓄しています。

堀部氏:新社屋は、構造、設備など当社の総合的な技術や新しい働き方を見てもらうショールームとしても機能させていきます。2021年4月の完成から8カ月ほどでおよそ100社の見学を受け入れてきました。今後も情報発信をしていく考えです。

清水建設北陸支店設計部長の堀部孝一氏(左)と設計部設備設計グループグループ長の天田靖佳氏(写真:守山 久子)
清水建設北陸支店設計部長の堀部孝一氏(左)と設計部設備設計グループグループ長の天田靖佳氏(写真:守山 久子)
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