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 2020年7月は広範囲で豪雨災害が発生しました。同月初旬には九州地方、中旬にかけて中部・中国地方、下旬には東北地方の山形県でも大規模河川の氾濫災害が生じたところです。気象庁が「令和2年7月豪雨」と名付けたこの災害で、日経ホームビルダーの記者も熊本県内の被災地を現地取材しました。9月号の巻頭に掲載した特別リポート「2020年梅雨末期豪雨 構造と敷地条件で明暗」で報告しています。

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 近年は豪雨に伴う水害が多発しており、日経ホームビルダーでも何度か取り上げてきたところです。こうした甚大な被害を伴う自然災害に直面するとき、住宅技術専門誌の編集者としては通常、「家づくりや住宅性能を考えるうえで有効な情報とは何か」という視点で事象の検証を試みようとします。例えば地震災害では、まずは宅地地盤や住宅の耐震性能などとの関係から考えようとするわけですが、これに対して「水害」は、同じようなアプローチが難しい面があるとしばしば感じます。

 水害事案で被災住宅の立地はとても重要なファクターですが、被害状況と建物自体の構造や性能との関係を一般化して整理することは、より困難です。だからこそ、個別の被害事例を丹念に観察することで今後の家づくりに生かせる、あるいは生かしていくべき教訓を手探りでも見つけ出すことが大切なのではないかと思うのです。

 他方、7月の豪雨災害が発生したタイミングは、新型コロナウイルスの感染リスクが再拡大し始めた時期に重なりました。避難行動や復旧活動の過程に「病禍」という大規模自然災害で現実的にあまり注目されてこなかったリスクが、大きな影響を及ぼしました。逆説的に、「被災しても自宅に住み続けられること」の重要性が従来以上にクローズアップされた面もあったのではないでしょうか。

 日経ホームビルダー9月号の特集「耐震等級3が新標準!」は、担当編集者のそうした問題意識から生まれた記事です。こちらは地震災害を念頭に置いた記事ですが、「被災しても自宅に住み続けられること」というテーマから家づくりを考えるという点で、7月の豪雨災害が投げかけた課題にどう取り組むかという点に通じる部分があると考えています。

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 この特集では、耐震等級3を標準仕様に取り入れている地域住宅会社や工務店の事例をいくつか紹介しています。いずれもちょっとしたアイデアと地道な工夫の積み重ねで実現している例ばかり。語弊を恐れずに言えば、一定の技術力を持つ事業者なら同様に実行できる取り組みでもあります。

 コロナ禍を背景に、住宅市場の縮小と事業者の淘汰はますます避けられないトレンドです。それは一方で、技術力の高い事業者ほど顧客に信頼され、顧客自身の選択眼もよりシビアになっていくという流れにほかなりません。そうした時流のなかで生き残るうえで、この特集で取り上げたような一歩先を見越したテーマを自らの指針とできるか否かは、一つの重要なカギになるのではないかと確信しています。