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 日経ホームビルダー12月号の特集1は、毎年恒例の「採用したい建材・設備メーカーランキング2020」。住宅会社や工務店などの実務者を対象に、建材・設備33分野で主要メーカーの採用意向を尋ねる独自調査企画です。

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 今年の調査結果をまとめた部門別ランキングでは、「戸建て住宅用制振部材」「建具などの金物」「複合フローリング」の3分野で首位が交代しました。また日経クロステックでは、有料会員および日経ホームビルダー購読者向けサービスとして、ノミネート全社のランキングと得票値を「詳細データ」として、2012年度分から公開しています。合わせてご覧ください。

 同特集の前半本編では、新型コロナウイルスの感染拡大という状況下にあって活発な動きが目立つ建材・設備に注目。「換気性能をウリにしたエアコン」「個人住宅での採用が勢いづいてきたタッチレス水栓」「“巣ごもり需要”を背景に戸建てでも設置ニーズが高まりを見せている宅配ボックス」という3製品に焦点を当てて、最新動向をまとめています。

 これらの製品動向を見ていて改めて感じるのは、家づくりのニーズが、耐震性能や省エネ性能など法制度を軸に形成されてきた「あるべき水準」と、少し異なるベクトルで広がってきているということです。そのベクトルは、もちろん建て主の趣味や好みに基づくニーズとも違います。コロナ禍は厄災でしかありませんが、例えばテレワークの浸透によって住まいに新たな役割・機能が求められているように、住宅ニーズ自体の大きな変化が生じ始めていると考えるべきではないでしょうか。

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 12月号の特集2「省エネ性能は『体験&実感』で売る」で取り上げた省エネ住宅の事例も、コロナ禍による“変化”と密接に関連する面があります。中小規模の住宅会社や工務店、設計事務所が、営業プロセスで自社をアピールする際、手っ取り早い方法の代表例は、見込み客を顧客OB宅に案内することでした。しかし、対面接触がこれだけ忌避される時世に、そうした手法がなかなか難しくなっています。

 今回取り上げた事例は、工務店の社長や設計事務所の代表が自宅として建設した省エネ住宅です。単独でモデルハウスを建設するのはどうしてもコストなどのハードルがありますが、自宅なら好きに建てることができるうえに、見込み客の都合に合わせて招待することも容易です。「つくり手自身が生活している住まい」なので、相手も気兼ねなく訪ねることができます。また、くつろいだ状態で住宅の性能を「体験&実感」してもらえます。

 家づくりのプロが自宅を顧客向けのモデルハウス兼用にする例自体は昔からよくあり、いまさら珍しい取り組みではありません。しかしコロナ禍を背景に変化せざるを得ない住宅営業の実態を考えると、こうした取り組みにも従来とは異なる新たな意義が加わっていると言えないでしょうか。