日経ホームビルダー2021年1月号は、特集2本立てでお届けします。特集1は「目指せ!30年超ノーメンテの外皮」。木造戸建て住宅の長寿命化について考える際、「住まい手のニーズに照らして、どこまで求められるのか」という議論がしばしば生じます。例えば、1軒の住宅を家族が代々住み継いでいくといったかつての住まい方は、現代では珍しくなりました。他方、中古住宅の流通市場では、築30年を過ぎたような築古物件の購入希望者が資金融資を受ける際、審査で担保価値を認められるのは基本的に土地。建物の現状を評価する動きも出てきていますが、まだ一般的とは言えません。
しかし、こうした実態を勘定に入れても、私は「長寿命化への挑戦には意味がない」とは考えません。長寿命化とは、すなわち耐久性能の向上です。現代の一般的な住まい方を踏まえたとしても、一定の期間に必要となる大掛かりなメンテナンス工事を減らせるとしたら、住まい手にとっては維持管理のコスト負担を軽減できるメリットが見込めます。また、近年は大型台風などで外皮の損壊被害が多発しましたが、屋根や外壁の下地が劣化していたことで被害を大きくした例も多くあったと聞きます。初期性能をできるだけ長く保つことの意義は、こうした防災の視点でも重要と考えます。
特集では「外皮」に注目し、住宅会社や建材・資材メーカーの最新の取り組みを記者が追いました。屋根も外壁も複数の建材・資材で複雑に構成されている部位ですから、現在の一般的な水準以上の長寿命化を総合的に実現するのは、そう簡単な話ではありません。しかしそれに向けた挑戦は、住宅会社や建材・資材メーカーにとって、技術力をアピールする機会そのものであり、住まい手の新たな需要を引き出すインセンティブにもなり得ると確信します。
もう1本の特集、日経ホームビルダー2021年1月号の特集2は「コロナ禍のリフォーム営業」です。いわゆる「ウィズコロナ」の社会的環境にあって、顧客対応や施工現場などに生じている変化や、それに対応する住宅会社・工務店の取り組みは、これまでも何度か取り上げてきました。今回は、リフォーム営業に焦点を当てて、地域に根ざした住宅会社3社の取り組みを紹介しました。
「感染対策に重点を置いた商材の提案」「YouTube(ユーチューブ)などによる非対面の集客戦略」「顧客へのきめ細かなサポート体制で“長いお付き合い”の関係構築」と、取り組み方は3社3様です。いずれも決して派手ではない地道な取り組みですが、共通するのは、厳しい事業環境だからこそ、できることから着実に実行するという強い姿勢。リフォームは新築以上に、コロナ禍の直接的な影響が厳しい事業分野です。3社のリアルな“奮戦記”は、読者の多くの皆さまに共感していただけるとともに、日々のお仕事にもお役に立てていただけるのではないかと思っています。