かねてよりお知らせしてまいりましたように、日経ホームビルダーは今号2021年4月号をもって休刊致します(同号「編集部から」参照)。最後に編集部の総力を挙げてお届けする特集は、合計49ページの大型企画「家づくりの軌跡が示す『未来』への道筋」です。
日経ホームビルダー1999年7月号の創刊からほぼ22年間、家づくりのプロにとって実務環境は大きく変化してきました。創刊前後の時期は、そうしたうねりの起点と言っていい時期でもあります。阪神大震災、その未曽有の被害実態を重要な背景にした建築基準法の抜本改正、住まいの安全・安心を性善説で支える仕組みの脆弱さが露呈した複数の欠陥住宅事件──。ミレニアムを挟んだこの10年程度の期間を総括すると、社会全体が、家づくりにまつわる“光と影”を従来より一歩踏み込んで捉え始めた時期ではなかったでしょうか。
特集の冒頭章では、まずこの創刊前後の期間を「始まりの風景」として注目。現在に至る家づくりの技術・ニーズの文脈がどこからスタートしたか、創刊メンバーであり現編集部のご意見番、村田真シニアエディターが自ら筆を振るいました。そのうえで次の章「家づくりの現在地」では、激変の時代を経て現在までに“常識”として形成されてきたポイントにスポットライトを当てました。「構造」「雨漏り対策」「省エネ」「自然災害」「法制度・判例」「経営環境」の6項目で整理しています。
例えば「自然災害」。この20年余、東日本大震災をはじめ甚大な被害を引き起こした大規模地震は、発生の域を全国各地に広げてきました。そして、大型台風などによる大規模風水害も含めて、自然災害が家づくりに突きつける課題はより難易度を高め、多様化の一途をたどっています。
風水害への対処ということでは近年、耐風性能を高めた部材・施工方法の開発や「対水害住宅」などの試験的取り組みが活発化。日経ホームビルダーの記事でも数回にわたって紹介してきたところです(2020年1月号特集「暴走『風』台風と向き合う」や21年3月号特集「待ったなしの水害対策」など)。こうした技術の追求を巡る動きは、ひと昔前ならプロでも真剣に受け止めたでしょうか。現在に至る変化のポイントからは、家づくりのプロが進むべき少し先の道筋が見えてきます。そうした道筋の展望を最終章「未来への羅針盤」としてまとめました。
特集の末尾には、付録として「日経ホームビルダー記事一覧(抄)」も掲載しました。創刊前の試作版1999年2月号から最新号まで、特集ほかリポート、トピックスといった大型記事のタイトルと、連載記事の掲載履歴をそれぞれリスト化しています。特集などのタイトルを時系列で追うと、時代々々に注目を集めた住宅産業の課題や問題がどのような変化を遂げてきたか、あるいはいまだ変化を遂げずにいるかが浮かび上がってきます。「日経ホームビルダー」という少し変わった住宅建築誌がこの世に存在したささやかな証しとして、皆様にお届け致します。
いよいよ最後のご挨拶となりました。日経ホームビルダー編集部一同、改めまして長年のご愛顧に厚く御礼申し上げるとともに、皆様のますますのご清栄を祈念致します。