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企業の注目は「環境負荷軽減材料」

 最近特に目立つのが、新材料採用による「軽量化」で問題を解決するケースだ。自動車であれば、車体を軽くして燃料消費量を減らせる。他方、建築・土木の資材であれば、搬送や施工の負荷が軽減され、現場の作業効率が高まる(図3)。軽量化材料の採用により材料の使用量が減れば、価格を抑えられる。軽量化材料を設計に使いこなすメリットは大きい。

図3 福井県の清間橋の桁材として、試験的に設置された炭素繊維強化樹脂(CFRP)。作業員が肩にかついで運べる軽さだ。(出所:福井県)
図3 福井県の清間橋の桁材として、試験的に設置された炭素繊維強化樹脂(CFRP)。作業員が肩にかついで運べる軽さだ。(出所:福井県)
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 軽量化材料以外にも開発が活発になっている領域がある。環境負荷を軽減する材料だ。代表格に植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)がある。植物の主成分であるセルロースを使った繊維状の材料で、樹脂に混ぜた複合材料(CNF強化樹脂)を造れば、強度に優れるだけではなく環境に優しい構造材が出来る。

 CNFは他にも、熱変形が小さい、透明度が高い、ガスバリア性(気体の遮断性)があるなど多様な特性を持つ。製品開発は一層熱を帯びており、実用化される例も徐々に増えている(図4)。

図4 CNF製透明フィルムの成形品
図4 CNF製透明フィルムの成形品
王子ホールディングスのCNF製透明シート「アウロ・ヴェール 3D」を使ってプレス成形した。上がスマートフォンのケースで、下が錠剤を封止するシート。
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 CNFの開発で世界をけん引する京都大学生存圏研究所教授の矢野浩之氏はこう語る。「環境負荷を軽減する材料が、次のものづくりのパラメーターになりつつある。今はクルマであれば軽量化による走行時のCO2削減が中心だが、その先を見据えて、製造過程におけるCO2の排出量が少ない材料を求める企業が増えてきた」。

 実際に、2015年のパリ協定〔第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)〕以降、植物由来の材料への関心は急速に高まっている。木材や木質バイオマス(再生可能な生物由来の資源)を活用するための材料開発は増加傾向にある。

 元トヨタ自動車の技術者で、現在は金沢工業大学大学院工学研究科教授を務める影山裕史氏も「環境問題はマスト(必須)。取り組めば良いのではなく、対応しなければビジネスができない。根底にあるのは、ものづくりは地球社会システムの一部という考えだ」と言う。

 建築・土木分野にも、影山氏が指摘するような考えが浸透し始めている。省資源化やリサイクル、廃棄物の有効活用を実現する手段として、新しい材料の実用化が期待されているのだ。