材料メーカーに物申す

 日本の素材メーカーにちょっと注文があります。サンプルに、本当に使える色をそろえるのを意識してほしいのです。現状では、真っ赤とか真っ黄色とか、「これはデザインに使えないな」という原色が必ず入っています。原色はめったに使えないから、特注にして値段を上げておいてほしいと思うくらいです。

 欧州の素材メーカーの色のサンプルは、どれを使っても失敗しない。最初から良い色をプロが選んでいて、ほぼ間違いなくバランスが取れる。原色がない代わりに、グレーやベージュといった渋い色はたくさんそろっています。この点で日本はとても遅れています。屋根の素材にしても壁の素材にしても、ありえない色までそろえていて、色彩のバランスがあまり良くないのです。

 もう1つ言いたいのは、型代が高いことです。型代が高いといろんな表現ができません。型が少なくなり、変化をつけにくいからです。型代が高いと結局、既製品しか使わなくなってしまう。これはメーカーにとっては都合が良いけれど、デザイン的には表情のないものが出来てしまう。

 型代をどうしたら安くできるかを考えたのですが、完成した型は、みんなが使えるように共有の財産にしていくようなシステムがあればよいのではないでしょうか。他の人の型も使える一方、他の人にも使わせてあげることで、使用料を安く抑えるシステムです。

 例えば、アルミ合金の押し出し材の断面形状の型を標準化し、長さが何mと決まっていて、みんながそれを使えると。それだけでもすごく楽になる。小さな会社が使おうと思っても、量が少なすぎて型代を負担すると発注できません。この点で、もうちょっと手厚いサポートがあったらうれしいですね。

水戸岡鋭治(みとおか えいじ)
水戸岡鋭治(みとおか えいじ)
ドーンデザイン研究所代表取締役/デザイナー。JR九州デザイン顧問。1947年岡山県生まれ。65年岡山県立岡山工業高校卒。大阪やイタリアのデザイン事務所を経て、72年ドーンデザイン研究所を設立。鉄道車両や建築、駅舎、バス、船などさまざまな分野のデザインを手掛ける。中でも、JR九州の車両や駅舎のデザインは鉄道ファンの枠を越えて広く注目を集め、多くの受賞歴がある。(撮影:吉成 大輔)
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