「マグネシウム(Mg)合金は今、最もホットな金属材料だ」。日本マグネシウム協会の平野省吾氏はこう語る。事実、Mg合金の需要は急増している。オーストラリアのコンサルティング企業であるCMグループの予測によれば、2016年に約85万tだった世界のMgの需要量は、今後10年の間、年率6%の成長を続け、2026年には157万tと2倍近くに達する(図1)。
Mg合金の採用に積極的な欧米自動車メーカー
こうした急速な需要増を引き起こしているのが、自動車の軽量化ニーズだ。自動車部品に使うダイカスト用Mg合金の需要を見ると、2016年の約23万6000tから年率10.3%で増加し、2026年には約57万tと2倍を超える見込みである。
採用に積極的なのは、欧米の自動車メーカーだ。「Mg合金の採用は10年前から欧米が圧倒的に進んでいる。その使用割合は欧州と米国がそれぞれ45%であるのに対し、日本は5%程度」(住友電気工業でMg合金を開発する技術者)という。
例えば、ドイツアウディー(Audi)は、単一の材料による車体の軽量化の考えを捨て、鋼(高張力鋼板)とAl合金、炭素繊維強化樹脂(CFRP)に、Mg合金を加えた4種類の軽量素材を適材・適所・適量で使い分ける「マルチマテリアルボディー」の設計に力を入れている。高級セダン「A8」では、ボディーのねじり剛性を高めるストラットブレース(ストラットタワーバー)にMg合金を採用。従来品(Al合金製と思われる)に対して28%の軽量化を実現した(図2)。