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 清水建設がロボットを多用する関西の高層ビル工事で中核を担う機械の1つは、同社が開発した世界初の水平スライドクレーン「Exter(エクスター)」だ。水平方向に伸び縮みするブームによって、作業半径を自由自在に調整できる。

 このクレーンについては、2017年8月に広島県呉市のIHI運搬機械・安浦工場で実機を披露している。ロボット施工を進めるための全天候型の閉鎖空間を構築するコア技術となる。Exterは通常のクレーンのようなブームの起伏動作がないので、屋根の高さを抑えられる点が特徴だ。

清水建設が2017年8月に公開した新型タワークレーン「Exter」。屋根の高さを抑えた閉鎖空間内で自在に稼働できる世界初の水平スライドクレーンだ。新築だけでなく、解体工事での使用も想定する(撮影:佐々木 大輔)
清水建設が2017年8月に公開した新型タワークレーン「Exter」。屋根の高さを抑えた閉鎖空間内で自在に稼働できる世界初の水平スライドクレーンだ。新築だけでなく、解体工事での使用も想定する(撮影:佐々木 大輔)
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 クレーンのブームは長さ方向に3分割した。根元に位置するブームは固定式で、その内側に中間と先端のブーム2体を納める構造だ。最大吊り荷重12トン、作業半径3~25mで、揚重高さ200mの性能を持つ。

 資材の揚重作業時には、ブームを伸ばしてカバーの側面に設けた開口部から外に突き出し、地上部から資材を揚重。ブームを縮めてカバーの中に資材を取り込む。カバー内ではブームを伸縮、水平旋回させて所定の位置に吊り荷を下ろす。ブーム先端とカバーとの位置関係をセンシングし、接触事故を防ぐ機能を持たせる。

 さらに、同社生産技術本部の坂本眞一副本部長は次のように説明する。「このクレーンには稼働データを収集して分析する機能も付加している。工程上の課題を検証し、対策の検討、実施につなげることもできる」

清水建設生産技術本部の印藤正裕本部長(左)と坂本眞一副本部長。印藤本部長は模型を前に、「ロボットは仲間だと感じてもらえるよう、魅力的な形にすることを心掛けた。自分の現場に置きたいと思ってもらうのが第一歩だ」と語る(撮影:佐々木 大輔)
清水建設生産技術本部の印藤正裕本部長(左)と坂本眞一副本部長。印藤本部長は模型を前に、「ロボットは仲間だと感じてもらえるよう、魅力的な形にすることを心掛けた。自分の現場に置きたいと思ってもらうのが第一歩だ」と語る(撮影:佐々木 大輔)
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 シミズスマートサイトで用いる3つの自律型ロボットは、人と協調しながら作業を進める。溶接トーチを操る柱溶接ロボット「Robo-Welder(ウェルダー)」、天井や床材を2本の腕で施工する多能工ロボット「Robo-Buddy(バディー)」、水平・垂直搬送ロボット「Robo-Carria(キャリアー)」だ。

 これらを“ロボットの職長”ともいえるロボット統合管理システムで制御する。この管理システムを使えば、全国100現場、8000台のロボットを統括できる。

 現場の担当者はタブレット型端末を操作するだけで済む。統合管理システムから送信される作業指示に基づいて、ロボットは自らの現在地や施工対象物を認識しながら現場内を移動し、自律的に作業する。稼働状況や作業結果はリアルタイムに記録、蓄積され、タブレットの画面上でいつでも確認できる仕組みだ。