日々新たなニュースが登場し、話題に事欠かない「自動運転」。自動ブレーキ、車線維持などの先進運転支援システム(ADAS)を搭載した完成車はすでに数多く登場しており、これらを組み合わせて「人間の監視の下、高速道路で車間距離を保ちながら同一車線を走行する」という条件付き自動運転は実用レベルに達している。
この自動運転の技術を、公共交通サービスに利用しようという動きが活発化している。経済産業省と国土交通省は2017年12月、石川県輪島市で一般公道を使った無人車両の走行実験を開始した。目的は、運転手を不要にしてランニングコストを抑え、持続可能な公共交通サービスを実現することだ。鉄道やバスなどの基幹交通システムと住民の自宅、あるいは病院など目的地との間をつなぐ「ラストマイルモビリティ」となることを目指している。
実験で使用する車両は、ヤマハ発動機のゴルフカートをベースに産業技術総合研究所(産総研)が改良を加えた。カメラやレーダーなど周囲の状況を検知するセンサーを搭載し、SAE(米自動車技術会)の自動運転規定「SAE J3016」でレベル4相当の自動運転機能を備える。これに遠隔地にいる担当者の監視・操作を組み合わせて、走行ルートに敷設された電磁誘導線の信号を目印に交差点や横断歩道のある約1kmの公道を最高12km/hで走行する。当初は万全を期して保安車両が実験車両の後方を走行するが、歩行者や一般車両への交通規制はいっさい行わない。自動運転の機能を順次強化して、最終的に少人数の担当者だけで複数の車両を遠隔監視・操作できるようにする予定だ。
石川県輪島市の実験は産総研が幹事機関として経産省および国土交通省から受託し、ヤマハ発動機、日立製作所、慶應義塾大学SFC研究所、豊田通商などが参画する。経産省と国土交通省は、公共交通サービスの自動運転を2020年に実用化するという目標を掲げており、石川県輪島市以外に沖縄県北谷町、福井県永平寺町、茨城県日立市でも公道を使った走行実験を実施する。
このほか、内閣府と国土交通省が事業主体となった「中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス」の公道実験も2017年度から順次始まっている。こちらは、高齢化が進行する山間地域において「道の駅」を拠点とする自動運転サービスを構築して、人の流れ、モノの流れを維持しようというものだ。