私たちのオフィスにやってくるのはRPAの透明ロボだけではない。実際に室内や通路に姿を現して、人間に代わって荷物を運んだり同僚の分身を務めたりする。
午後3時、オフィスでパソコンに向かっているあなたにビルの郵便管理室から内線電話が入った。「○○社からの荷物が届いてます」。エレベーターホールで待っていると現れたのは配達員、ではなくスーツケースを一回り大きくしたくらいの車両だ。車両が自らエレベーターを降りてあなたの前で停車した。スマートフォン(スマホ)をかざして側面の扉を開けて荷物を取り出すと、車両はまたエレベーターに乗り込んで帰っていった――。
オフィスの宅配にもロボ
郵便物や小売店の商品を人間の配達員に替わってロボットの車両が届けてくれる。近い将来、こんなオフィス風景が当たり前のものになるかもしれない。実現に向けた実証実験が相次いで始まっている。デベロッパー大手の森ビルがロボット開発ベンチャーのZMPと組んで2018年3月31日まで、東京・港の六本木ヒルズで実施した。ZMPが開発した歩道を自動走行する宅配ロボット「CarriRo Delivery(キャリロデリバリー)」を使い、六本木ヒルズ内の物流センターからオフィス棟までの通路やエレベーターを通って郵便物を配達した。
ZMPは電通国際情報サービス(ISID)とも共同で実証実験を実施。3月中の3日間を使って東京・品川のオフィス街を自動的に移動してカップコーヒーを届ける実験だ。
「人間とロボットが共存するオフィスや自動化された街を実現することを目指す」。六本木ヒルズを運営する森ビル タウンマネジメント事業部の藤原純氏は実証実験の先にある目標をこう語る。目指すのは六本木ヒルズ内の企業や住宅へ荷物を運ぶ物流コストの削減だ。
六本木ヒルズは施設全体で同一の物流施設を使う共同物流方式を採用している。施設内の企業や住居宛ての郵便物は森ビルが物流会社に委託して運営する共同物流センターに集約。仕分けした後、配達員が各戸に配る。