芥川賞・直木賞の授賞式などで知られる東京・日比谷の「東京會舘」が、約4年間の閉場を経て明日、2019年1月8日に再開場する。
18年12月13日に行われた内覧会で、東京會舘の渡辺訓章代表取締役社長は、「新本舘のコンセプトは『ニュークラシックス(NEWCLASSICS.)』。2020年の100周年に向けて、今の価値を守っていくだけでは難しい。守るべきところは守りながら、変えるべきところは変えた」と語った。
確かに新本舘は、谷口吉郎(1904~79年)による旧東京會舘ビルのモダニズム的デザインとは一線を画するものとなっている。それでいて、要所要所に旧ビルを思い出させる工夫もある。
まずは、建て替えまでの経緯を振り返ってみよう。
建て替え前の旧東京會舘ビルは1971年竣工。基本設計を谷口吉郎が、実施設計と監理を三菱地所が担当した。地下5階・地上12階建ての鉄骨鉄筋コンクリート造。宴会と飲食の機能に特化。芥川賞・直木賞の発表と授賞式が開催されていたことで知られ、作家など文化人にもファンが多い。
建て替え前のビルは、東京會舘本舘としては二代目。渡辺社長が言う「ニュークラシックス=新しくて伝統的」というコンセプトは、むしろ初代本舘の様式建築のイメージに現代性を加えたものといえるかもしれない。
東京會舘の創業は1922年(大正11年)。「誰でも気軽に利用できる民衆のための社交場」を目指し、東京商業会議所会頭を務めた藤山雷太らにより、設立された。初代の旧本舘はルネサンス様式を取り入れた洋風建築だった。
71年に初代本舘を建て替えることとなった理由は、設備の老朽化などのほか、64年に開催された東京五輪の影響が大きかったようだ。60年代の都心は東京五輪を控えて、パレスホテルやホテルオークラ、東京プリンスホテルなどの大型ホテルが次々と建設され、宴会場が急増した。そのなかで、競争力を高めるために、2代目本舘へと建て替えられた。
基本設計を担当した谷口吉郎は、オフィス街は情緒的性格が欠けた味気ない街になりがちであると考え、社交場の華やかなイメージを印象付ける色彩にこだわった。分かりやすいのが1、2階の外装だ。丸の内に昔あったレンガ通りの面影を再現するかのように、朱泥(赤茶色)タイルと黒御影石を使って街路に彩りを与えた。
それに対して、3階以上のオフィスフロア部分などは縦に細長い窓とし、通りを挟んで立つ国際ビルの外観とリズムをそろえた。帝国劇場などが入っている国際ビルは、東京會舘ビルを建てる前、66年に同じく谷口吉郎の設計で竣工した建物だ。
谷口による2代目本舘についてもっと知りたい方は、閉場時のリポートをお読みいただきたい(谷口吉郎が余韻にこだわった東京會舘ビルが閉館)