2020年の「切削加工ドリームコンテスト」(DMG森精機)で金賞を受賞した、いしい旋盤製作所(東京・大田)を率いる。最新鋭の加工機を駆使した応募作品は審査員を当惑させた。どうやって削ったか、切削加工の専門家でも分からなかった。手の感覚で加工する技能を引き継ぐ次世代の担い手を増やしたい、と語る。(聞き手は木崎健太郎)
賞をいただいたフッ素樹脂製の「超耐久!高精度角度を保つ伸縮ポンプ」はもともと、「他社ではできない」と回ってきた仕事で使った加工手法の要素を入れて造ったものです。コンテストはそれほど好きではありませんでしたが、ドリームコンテストの存在は以前からよく知っていました。今回応募するに至ったのは、役に立つものを生み出す技能を世の中に知ってもらいたかったから。特に次世代を担う学生たちに関心を持ってほしいと考えているからです。
職人が自らの手で、コンピューターに頼らず1から10まで自分の感覚で造ったものを、切削加工の専門家である大学の先生方がどう評価するかにも興味がありました。他の人に造れないのは自分で分かっていますから、技能面を評価されて「技能賞」あたりを頂ければいいなと。まさか最高位の金賞(産業機械加工部門)などという大それた賞をいただけるとは思っていませんでした。