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電池の安定調達に向けて、テスラは内製化に舵(かじ)を切ります。ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)や同BMWなどもスウェーデンのスタートアップであるNorthvolt(ノースボルト)に出資し、早ければ21年内にも電池の量産を始めます。

 EVの成功は電池の確保にかかっています。品質と量を満たせる電池セルのサプライヤーは世界に限られ、19年は日中韓の電池メーカー上位6社が世界市場の87%を占めていました。

 こうした状況の中で、EV化を中国と競い合っている欧州では、電池の安定調達に向けて中国や韓国の電池メーカーを欧州域内に誘致するとともに、欧州企業としての電池企業を育成する試みを数年前から展開してきました。代表例が、欧州連合(EU)の欧州委員会が結成した「欧州バッテリー同盟(European Battery Alliance、EBA)」です。ノースボルトなどいくつかの電池スタートアップを資金面で支援しており、電池の安定的確保のためのリスクヘッジを進めています(図4)。

図4 VWのEV専用プラットフォーム「MEB」
図4 VWのEV専用プラットフォーム「MEB」
左が車両前方。電池は前後の車軸の間の床下に、電動アクスルは後部車軸に搭載する。電池は今のところ、韓国メーカー製を中心に調達している。(出所:VW)
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 実は、欧州の取り組みにはもう1つ狙いがあります。電池を域内で生産してEV化を進め、同時に再生可能エネルギーの導入を加速させるのは、エネルギー安全保障上の目的があるのです。EVシフトを機に、中東に依存していた原油の輸入を減らしたいと考えているのです。

 原油の輸入を減らし、おおむね無尽蔵の太陽エネルギーを直接利用する再生可能エネルギーを利用した電力に転換したとしても、その入れ物である電池を他国、あるいは他地域に依存してはエネルギー安全保障上の観点から元も子もありません。早い段階で電池技術と製造能力を獲得できなければ、原油と同様に他国に電池、すなわちエネルギーの利用手段を依存してしまうことになりかねません。

 欧州と同様に、米国もエネルギー安全保障の観点から原油の中東依存から脱却を目指しています。国家安全保障の問題を調査する米国のInstitute for Defense Analyses(国防分析研究所、IDA)は19年12月に発行した報告書で、「欧州では、自動車産業の成功を維持するためには、電池セルの製造産業の育成が必須と認識されているのに対して、米国にはその認識がない」と警告しています。

EV産業という視点で見ると、日本には電池メーカーも多く商機のようにも映ります。

 確かに、テスラと組むパナソニックだけでなく、GSユアサや東芝など、多くの電池メーカーが日本にはあります。最近は中国や韓国の電池メーカーに押され気味という印象があります。

 しかし本来、家電用やEV用のリチウムイオン電池の基礎研究から量産化まで、日本企業が世界の先駆けとなってきたのも事実です。現在でもリチウムイオン電池に必要な素材技術や生産技術を国内企業は高いレベルで確保しており、日本は電池の輸出国になりうる位置付けにあるはずです。石油から再生可能エネルギーへの転換が求められている今の状況は日本にとって、エネルギー利用手段の輸出国になりうるという機会なのです。