独Siemens(シーメンス)が、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援で攻勢をかけている。日本の製造業が抱える課題や今後の潮流について、同社日本法人社長の堀田邦彦氏に聞いた。(聞き手は、高野 敦=日経クロステック、山田剛良、吉田 勝、木崎健太郎=日経クロステック/日経ものづくり)
日本でもDX支援を本格的に展開する戦略を打ち出した。主要ターゲットの製造業にどうアプローチするか。
堀田氏 大手企業と中小企業の両方にアプローチする。
大手企業は課題が明確なので、その課題に合わせて個別に提案していく。一方、中小企業は課題が明確ではないことが多い。人も少ないし、そもそもDXを推進するIT専門部署がない場合もある。そこで中小企業には我々のベストプラクティスを提案する。

なぜ中小企業は課題が明確ではないのか。
堀田氏 何から始めればよいのか迷っているようだ。取引先の状況を見極めている企業も多い。中小企業はだいたい大手企業のサプライチェーンに組み込まれているので、取引先の決定を待つ状況になっている。
課題がはっきりと見えていない中でDXを始められるのか。
堀田氏 そのために、まずアセスメントを実施する。ものづくりに絞ったアセスメントで、グローバル企業と比較して脆弱な部分をあぶり出す。そこから始めるのが一般的だ。
具体的にどこから手を付けることが多いのか。
堀田氏 CADやCAEなど導入済みのツールはなかなか変えられない。従って、これらをつなげる情報共有プラットフォームを導入することが多い。当社でいえば、PLM(製品ライフサイクル管理)ツールの「Teamenter」だ。さらに、最近はクラウド化の需要も増えている。同ツールについてもクラウドベースの「Teamcenter X」を用意している。クラウドだと、バージョンアップやバグ対策などのサポートを世界規模で迅速に提供できる。
クラウド化の需要が増えているのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあるか。
堀田氏 それもあるが、単純にクラウドのほうがオンプレミスよりも有利になってきたことが大きい。クラウド化の最大の懸案はセキュリティーだったが、ユーザーの心理的な抵抗が小さくなってきた。
どのような点でクラウドのほうが有利なのか。