とにかく一番大切なことは、人々が幸せになることです。我々は少しでも、その役に立つことをするということに尽きます。
ナイアンティックが手掛けるゲームで遊んでもらうことによって、外出して体を動かす。ユーザー同士が現実世界でつながる。こうした体験をしてもらうことで、ユーザーの人生を豊かにしたい。こう考えて、ポケモンGOやイングレスを開発しました。周囲を見渡すと、人生を楽しんでいる人というのは、人との出会いを大切にし、直接コミュニケーションしているケースが多いと思っているからです。
デジタルデバイスを使ったゲームの多くは、ユーザーが体を動かすというよりも、スクリーンの前で受動的に楽しむものでしょう。このような娯楽だけにふけっていると、人間というのは幸せを感じるよりも、不安や怒りといった負の感情が強くなってしまうような気がします。
ポケモンGOはエンターテインメントの世界で人々を幸せにしていると思いますが、オフィスワーカーを元気にするようなサービスを考えていますか。例えば、ビジネスパーソンを幸せにする「Something GO for Business」みたいなものとか。
面白い質問ですね。でも、そんなことを考えたことがありませんし、開発する予定もないです。ただし、街を歩きながらミーティングすることは効果的だと思っていて、私もよくやっています。
先日、日本法人社長の村井(説人氏)と京都の街を歩きながら、2018年のビジネスプランについて話をしました。非常に密度の濃い話ができて、有益な散歩でした。
今は絶好調に思いますが、過去には厳しい時期があったと聞いています。
いつも挑戦と苦難の連続ですが、特にきつかったのが、ベンチャー企業の「キーホール」を創業した直後です。2000年に起業した直後にドットコム・クラッシュがあり、続く2001年に9.11(アメリカ同時多発テロ事件)があって、米国経済が大変厳しい状況に陥りました。
悲観的になったり前向きになったり
当時のキーホールは投資を受けているものの、プロダクトが未完成の段階で収入がほとんどなかった。「どうやったら生き残れるか」といつも頭を抱えていました。どこかに助けを求めようとしましたが、手を差し伸べてくれるところはほとんどない。
街を歩いていると、毎日どこかでオフィスが閉鎖されていく。そんな光景を見ながら、「明日は我が身」と悲観的になったり、「何とか踏ん張ろう」と前向きになったりしたものです。
苦境に立たされたこの時期、自分自身と真摯に向き合うことができました。振り返ると、これが大変貴重な経験で、今の仕事に生きています。