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河川の漁業権で交渉

上坂 民間主体により、河川で小水力発電を行う場合、内水面漁業権に対する補償がネックになることがあります。地域外の主体の場合、この問題を乗り越えて前に進めるには、補償金額の多寡を巡る「交渉」になります。一方、地域の人が小水力事業を行う場合、漁業権で利益を得るのは「同じ地域の仲間」になるので、補償金額の問題ではなく、話し合いなどによる「合意形成」を目指すことになります。

 地域外の主体との「金額交渉」では、両者が納得する水準に至るのは容易ではありませんが、地域の人同士による「合意形成」も簡単ではありません。特に地域内に小水力の推進で強いリーダーシップも持つ人がいない場合、仲間同士だけに様子を見合ってしまい、なかなか前に進まないケースを多く見かけます。

 つまり、民間主体の場合、地域外からの投資であっても、地域の人による開発であっても、事業化までには時間がかかるのです。当初、FITによって、民間主体の小水力開発が進むと期待されましたが、それほど実績が増えないのは、こうした背景があります。

小水力の主体には、さまざまなケースがあるとのことでしたが、今後のあるべき小水力事業をどのように見ていますか。

上坂 風力や太陽光などの再エネは、大規模化することでコストを下げ、国のエネルギー政策で主力電源を目指すところまで成長してきました。しかし、小水力は、ダムのような大規模開発ではなく、小規模な施設で安定的な電力を生み出すことが特徴になっています。

 「主力電源として国家のエネルギー供給を担っていく」というような志で大上段に構えているわけではありません。

 経済産業省は、FIT見直しの議論の中で、今後の再エネ推進の在り方に関し、大規模化による「競争電源」と、小規模な「地域活用電源」に分ける方向を示しています。これは、世界的な再エネ普及の動向を見ても、的を射ています。

 再エネ先進国のデンマークが典型的です。かつて同国では、農民の出資により農村に陸上風車を建ててきました。しかし、再エネの大量導入期に入ると、風車は巨大化し、新規開発の主流は大規模な洋上風車に移りました。そうなると開発の主体は、個人ではなく大資本が担うようになってきました。

 そうしたなかでも、デンマーク政府は、洋上風力と並行して、地域の陸上風車には地域住民の出資を推進するなど、地域主体の電源としての位置付けを維持しています。

 つまり今後、再エネは、大資本による大規模開発と、地域資本や住民を主体に開発される小規模な電源に2極化していくのです。小水力発電は、後者の「地域活用電源」として地域を支えていくための電源であることは明らかです。