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50年以上使い続けられる

地域住民による再エネ開発の場合、初期投資に必要な資金をいかに賄うのかが課題になると思います。「小瀬谷発電所」の場合は、どのように資金を調達したのですか。

全国小水力利用推進協議会の上坂博亨代表理事・富山国際大学教授
全国小水力利用推進協議会の上坂博亨代表理事・富山国際大学教授
(撮影:日経BP)

上坂 そうですね。地域住民主体の小水力でもまさにそこが大きな壁になります。小瀬谷発電所の場合は、地元の有力酒造メーカーが加わる形で、発電会社を設立し、同社の信用力も借りてファイナンスに成功しました。

 こうした信用力のある地元企業の参画がなくても、住民主体の小水力の建設に成功したケースもあります。岐阜県群上市白鳥町の「石徹白(いとしろ)番場清流発電所」がそれです。農業用水路を活用した125kWの小水力です。

 同発電所のある石徹白地区は、100世帯足らずの中山間地の集落です。同集落のほぼ全世帯が組合に出資するスキームで、総工費約2億3000万円を賄い、2016年6月に稼働しました。年間約2000万円の売電収入から得られる収益は、農業関係に使われます。

 とはいえ、こうした地域住民主体の小水力開発は、過疎の進む地域社会にとって負担が大きく簡単ではありません。当初は、資金力ある企業が主体になって投資・建設し、投資回収しながら、徐々に地域の所有に転換していく形が現実的かもしれません。

FITによる買取期間が終了した後、売電単価が大幅に下がりますが、小水力は存続できますか。

上坂 この問題は、FITで建設された再エネ設備全体の大きな課題です。ただ、小水力は、相対的に運転維持費が安く、プロペラの補修や交換程度で、大規模なリニューアルなしに50年以上、場合によっては100年運転できます。このため、再エネのなかでもFIT後の発電コストには競争力があります。

 このコラムの冒頭で、「小水力の課題はコスト」と言いましたが、これは10~15年での投資回収を想定する民間企業の視点からで、50年から100年使い続けることを前提に考えれば、むしろ再エネの中でも発電コストは安くなります。

 地域主体の小水力への筋道として、域外企業の投資で建設した設備を徐々に地域の所有に移していくという流れを提唱しましたが、これが可能になる理由は、小水力の技術・設備が長寿命だからです。

 また、今後、こうした小水力の特徴に着目し、金融機関が超長期の融資スキームを提供してくれれば、地域社会に大きな初期負担がなく、当初から地域所有の小水力を建設することも可能になると期待しています。