全4475文字
PR

ロケットの開発と打ち上げを手掛けるインターステラテクノロジズ。精力的に進める超小型衛星打ち上げロケットの開発の背景には「今、飛び込まないと日本はこの市場から取り残されてしまう」との危機感がある。技術も人材もサプライヤーもそろう日本、チャンスは目の前にあると説く。(聞き手は高市清治)

写真:吉田サトル
写真:吉田サトル
[画像のクリックで拡大表示]

 インターステラテクノロジズ(IST)の事業は2つ。1つは「観測ロケットMOMO」です。現在、「人工衛星打ち上げロケットZERO」も開発しており、これも事業化予定です。世界で一番安くて便利なロケットを作ろうという思いを持って、事業にのぞんでいます。

 「なぜロケット打ち上げか」という問いに対しては、「人工衛星の小型化に合わせて、ロケットの小型化・低価格化を進めたいから」と答えています。海上でも山岳地帯でもインターネットを利用できるようにする「衛星による全地球インターネットアクセス」や地球観測などを含めた宇宙産業は現在、日本だけでも2000億円から3000億円程度、ワールドワイドで40兆円規模の市場があると言われています。

 では、宇宙産業のネックは何かというと、ロケットの打ち上げです。開発期間が長い。ロケットの製造にも打ち上げにも多大なコストがかかる。何より技術的に難しい。しかし、ロケットという輸送手段がなければ、宇宙産業の要である人工衛星をはじめとして、地球上から宇宙空間に何も打ち上げられません。それにもかかわらずロケットの打ち上げ数は非常に少ないのが実情です。需要に対して供給が極端に小さい。ロケット打ち上げを担う主要企業になれば、宇宙産業という巨大市場をつかめる。これが当社の狙いです。

ロケット利用で新たな市場を創出

 当社の設立は2013年。北海道大樹町にオフィスを構え、現在に至っています(日経ものづくり2019年6月号特集「宇宙開発にもパラダイムシフト」参照)。観測ロケットのMOMOの打ち上げ、開発を進めつつ、衛星打ち上げロケットZEROの開発にも注力しています。

スーパーマーケットだった建屋を改修したインターステラテクノロジズのオフィス兼工場。(写真:吉田サトル)
スーパーマーケットだった建屋を改修したインターステラテクノロジズのオフィス兼工場。(写真:吉田サトル)
[画像のクリックで拡大表示]

 2019年7月には第三者割り当て増資で12億2000万円を調達したと公表しました。追加の資金調達も引き続き進めますが、喫緊の開発資金はこれで賄えそうです。

 大樹町を選んだのはロケットの射点として恵まれた場所だからです。東と南に海面が開けているので、ロケットをどの方向にも真っ直ぐ打ち上げられる。地球を南北に巡る極軌道から、赤道上空3万6000kmの静止軌道に至るまで、さまざまな軌道へロケットをダイレクトに打ち上げられます。

 2013年に「すずかぜ」の打ち上げに成功してから合計10機、当社の前身である民間有志のロケット開発組織「なつのロケット団」が打ち上げたロケットまで含めると16機を打ち上げてきました。

* インターステラテクノロジズの前身。ロケット技師や漫画家らからなる民間の宇宙開発を目指す組織。2005年、推力30kgf級の小型ロケットエンジンの開発からスタートした。

 2019年5月に、観測ロケットの「宇宙品質にシフト MOMO3号機」を打ち上げ、民間が開発したロケットとして国内ではじめて宇宙到達を果たしました。MOMOは姿勢制御機能をもった液体燃料のロケットで、この技術を持った民間のロケットで宇宙に到達した例としては世界で4番目となりました。現在、MOMO5号機の打ち上げを準備中です。

 国内の観測ロケットは宇宙科学研究所(JAXA)が主に手掛けており、現在でも10億円程度の市場があります。MOMOの事業はこの市場に食い込むのを狙っています。

 従来型の利用だけでなく、広告や個人利用など従来なかった事業も展開しています。例えば、ロケットの機体を活用した広告です。これまで酒造会社の「平和酒造」(和歌山県海南市)やお好み焼き店の「なにわ」(福岡県北九州市)などの広告として機体を活用しました。国民の税金でロケットを開発し、打ち上げているJAXAではなかなかできない事業です。

 意外な活用方法に、個人のペイロード(積み荷)の打ち上げが挙げられます。MOMO5号機では、個人のスポンサーが自分で作った電子工作物を打ち上げ、宇宙空間でその人形が動く様子を「ニコニコ動画」で中継しようとしています。ロケット利用には、まだまだ新たな市場拡大を望めると考えています。

この記事は有料会員限定です

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

日経電子版セット今なら2カ月無料