名古屋大学ナショナルコンポジットセンター(名大NCC)は、熱可塑性CFRP(炭素繊維強化樹脂)を用いた自動車のシャシーの製作に成功した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導する国家プロジェクトの一環である。大型部品を造るのが難しいとされてきた熱可塑性CFRPの実用化に向けた“壁”を乗り越えた。同プロジェクトを率いる名古屋大学特任教授の石川隆司氏に、これまでの開発過程で苦労した点や今後の取り組みなどを聞いた。(聞き手=高田 隆)

 今回製作したのは、英ロータス・カーズ(Lotus Cars)のスポーツカー「エリーゼ(Elise)」のオールアルミニウム(Al)合金製シャシーを、熱可塑性CFRP製に置き換えたものです。同シャシーの質量は40kgで、Al合金製(45kg)より約10%軽くできました。シャシーの強度や剛性は、Al合金製と同程度です。

 エリーゼのAl合金製シャシーは約100個の部品で構成されていますが、我々が造った熱可塑性CFRP製シャシーの部品点数はわずか10個です。これらの部品を「超音波融着法」という低コストの方法で接合してシャシーに仕上げました。部品点数を減らしたことなどで、製造コストはAl合金製シャシーと同程度に抑えられます。現時点で社名は明かせませんが、日本の自動車メーカー1社が既に、我々の開発した製造技術を導入する準備に入っています。他の日本メーカーも、導入の検討を進めています。

写真:宮原一郎
写真:宮原一郎

 CFRPの自動車ボディーへの実用化では、熱硬化性CFRPが先行しています。ただし熱硬化性CFRPはコストが高い上、大型部品を成形するのに5分程度の時間がかかります。これに対して、我々が造った熱可塑性CFRP製シャシー部品のコストは熱硬化性CFRPよりも安く、Al合金と同程度です。部品の成形時間は1分に短くできます。

 1分という成形時間は、日本の自動車メーカーが求める製造タクトタイムをクリアしています。車両価格が300万~400万円の量産車のボディーへの実用化では、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)工法などで造る熱硬化性CFRPよりも、熱可塑性CFRPの方が製造コストと成形時間の双方で優位性があります。