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機械でプレーヤーの「限界を引き出す」─。オムロンは、卓球ロボット「フォルフェウス」の最新版(第6世代)に人工知能「メタAI」を搭載した。ゲーム企業のスクウェア・エニックス(スクエニ)がゲームの進行制御用に開発した人工知能(AI)技術だ。最終目標は「人と機械の融和」の実現にある。(聞き手は吉田 勝)

写真:山本尚侍
写真:山本尚侍

 卓球ロボット「フォルフェウス」はオムロンの技術・知財本部の部門横断型プロジェクトです。我々が強みを持つ要素技術を組み合わせ、1つの「ソリューション」として対外的にアピールするのが狙いです。若手の研究者やエンジニアを中心に、人工知能(AI)やロボット、画像処理、組み込みソフトウエア、無線通信といった基幹技術の専門家を集めて作っています。メンバーは長くても3、4年で入れ替わります。2020年1月の「CES2020」でお披露目したフォルフェウスは第6世代となります。

 私は2018年度からプロジェクトリーダーとしてフォルフェウスの開発に参加しました*1。プロジェクトに参加している間は従来の仕事を離れて、フォルフェウスの開発が本業になります。すごく楽しかったですね。

*1 フォルフェウスのプロジェクトには、技術の未来像をアピールするという広報的な面に加え、人材育成の面がある。若手~中堅の研究者の中から、次代のリーダーとなる人材を選出してリーダーに据えているという。

機械から人へのインタラクションを実現

 世代を重ねてきたフォルフェウスですが、その根底にはオムロンが掲げる「人と機械の融和」があります。このキーワードをビジュアルかつ共感できる形でどう見せるかが毎回の開発テーマになります。

 どういう技術を使ってフォルフェウスを造れば人と機械の新たな関係性が具体的に提示できるか。これをチームで議論し、毎年開発テーマを決めてきました。

 私がプロジェクトリーダーとなって最初の2018年、第5世代フォルフェウスの開発テーマは「エキスパートプレーヤー&エキスパートコーチ」でした。そして続く2019年、この第6世代の開発テーマは「機械で人の限界を引き出す」です。

 フォルフェウスは開発当初から人と機械とのインタラクション(相互作用)による人の成長の実現を目指しています。しかし、仮に「人を理解できるAI」を開発できても、そもそもフォルフェウスの卓球スキルが不十分では、どうにもなりません。そこでまず第5世代でハードウエアやアルゴリズムを徹底的に改良し、素人プレーヤーではまず勝てないレベルにまで卓球スキルを高めました。第5世代フォルフェウスでは、その高いレベルの卓球スキルを駆使して練習相手になり、プレーヤーのスキルレベルも引き上げるところまでを狙いました。

 続く第6世代は、第5世代が備える「プレーヤーを成長させる能力」を活用して、「プレーヤーの限界を引き出す」に挑んだわけです。

 これまでフォルフェウスのプロジェクトリーダーは世代ごと、つまり毎年交代してきたのですが、私は最初から2年の予定で引き受けました。「人と機械のインタラクション」を2年がかりで実現する、まず第5世代でハードウエアの性能を高め、第6世代で人とのインタラクションを強化するというもくろみだったのです。

第5世代のフォルフェウス
第5世代のフォルフェウス
(写真:山本尚侍)
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