新型コロナウイルスが猛威を振るい、さまざまな産業に影響を与えている。ゲーム業界も例外ではない。そんな中、米マイクロソフト(Microsoft)が次世代ゲーム機「Xbox Series X」を、米ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が同「PlayStation(PS)5」の本体仕様を2020年3月中旬に明らかにするなど、ゲーム業界にとって大きな話題が発表された(関連記事)。そこで、ゲーム業界に詳しいSMBC日興証券 株式調査部 エンタテインメント・メディアチーム シニアアナリストの前田栄二氏に、次世代ゲーム機に対する見解やゲーム業界に与える新型コロナの影響などについて語ってもらった。(構成=根津 禎)

これまでマイクロソフトとSIEがそれぞれ公表している情報を見ると、Xbox Series XとPS5で大きな差はありません。ですが、細かく見ると、いわゆる「カタログ仕様」はXbox Series Xのほうがやや上回ります。例えば、Xbox Series Xでは、GPUの演算処理性能は12TFLOPSで、内蔵SSDの容量は1Tバイトです。一方、PS5は同10.3TFLOPSで、825Gバイトです。こうした各種仕様から鑑みると、おおまかに言ってしまえば、Xbox Series Xはカタログ仕様重視、PS5はバランス重視、と表現できます。
GPUの演算処理性能に差があるとはいえ、この差をユーザーが体感できるかどうかは分かりません。グラフィックスも同様で、現行機で既に4K映像に対応していますし、十分にきれいです。次世代機では8Kにも対応しますが、この違いがはっきり分かるディスプレーを所有しているユーザーは限られるでしょう。
一方で、次世代機をユーザーに訴求する上で分かりやすいのは、現行機に対するユーザーの「不満」を解消することです。すなわち、マイナス点をゼロかプラスにするわけです。これまでゲーム機が世代交代するたびに、現行機の不満は解消されていきました。現時点で残っているのが、ゲームデータを読み込む時間、つまり「ロード」時間に対する不満です。
そこで両機とも、現行機が採用しているHDDよりも高速なSSDを採用しました。高速なほどロード時間を短縮し、よりストレスなくゲームをプレーできます。ユーザーがロードを待っている間に、ふと現実に戻って、ゲームへの没入感を失う恐れがありますが、それを回避できます。特にSIEは、高速化に注力し、Xbox Series Xよりも高速なインターフェースを採用しました。