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 2030年までにすべての新車販売を電気自動車(EV)に切り替える――。インド政府が2017年5月に掲げた野心的な目標は、2018年2月中旬にあっさり撤回された。政府が新たに設定した計画の骨子は、2030年に600万台の内燃機関車と400万台のEVを販売する市場に成長させることだ。

 EV目標の撤回は、厳しい立場にあったハイブリッド車(HEV)にとっては追い風となるが、実は自然と吹いた風ではなさそうだ。トヨタの現地合弁会社Toyota Kirloskar Motor(TKM)で社長を務める立花昭人氏は日経 xTECH/日経Automotiveなどの取材に応じ、インド政府がEV一辺倒の政策を見直した背景を明かした(図1、インタビュー前編:インド攻略は「つまみ食い」で、トヨタ現地法人社長)。

(聞き手は久米 秀尚=日経 xTECH/日経Automotive)

図1 Toyota Kirloskar Motor(TKM)社長の立花昭人氏
図1 Toyota Kirloskar Motor(TKM)社長の立花昭人氏
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2018年2月に開催されたインド最大のモーターショー「デリーモーターショー(Auto Expo)2018」ではEVに関するアピールを一切しなかった。

 多くのインド人ジャーナリストからも「EVはないのか」と聞かれた。そこで、「EVを買いたいですか」と逆に質問したら全員から「No」と返ってきた。ここに真実がある。マーケットがない中でどうやって商品を企画するのか。まずは消費者に、どのようなEVを求めているかを聞くことから始めなければならない。それもなくモーターショーでアピールするのは違うと判断した。

 まだEVについては具体的な形にできていない。車両のタイプや大きさ、価格帯、航続距離など、売れるEVの答えをトヨタは持っていない。トヨタは20年以上EVについて世界各国で研究開発に取り組んできたが、成功と言えるモデルは一つもない。この経験も踏まえながら、インドで売るEVをもっと真剣に考えないといけない。

 市場調査はすでに始めているが、まだEVのユーザーがいないので難しい。EVを求めている人がそもそも少ない。