独立系新電力最大手のF-Powerは3月30日に、東京地裁から会社更生手続きの開始決定を受けた。F-Powerが東京地裁に会社更生法の適用申請したのは3月24日。わずか6日後の開始決定となった。今後、F-Powerの会社更生手続きはどのように進むのか。日本航空(JAL)をはじめ数多くの会社更生申立事件に関与した西村あさひ法律事務所の柴原多弁護士に聞いた。
エネルギー会社で会社更生法が適用されるのはF-Powerが初めてです。そもそも、会社更生法とはどのような手続きなのですか。

柴原弁護士 会社更生法は極めて強力な再建手続きです。大きく3つの特徴があります。第1に裁判所が任命する管財人が付くこと。もう1つの再建型倒産手続きである「民事再生」の場合は管財人が付きません。管財人は公正かつ強力なリーダーシップを発揮します。
第2が、金融機関などの担保権の行使が禁止されることです。このため安定して事業を継続することが可能です。第3が、一定の範囲で租税債権の権利行使も止めることができます。
会社更生法は強力に更生を進める力があります。債権の取り扱いなどの最終チェックを裁判所がするため、企業側が裁判所に提出する説明資料の量が膨大になるなど、手続き負担が重くなりがちです。このため会社更生法の利用は、大規模な企業が中心です。過去にはJALや通信事業者のウィルコムなどが利用しました。
エネルギー会社の会社更生法適用はF-Powerが初めてです。会社更生法の適用は、より大規模な企業が多いような印象があります。適用の条件とは。
柴原氏 倒産した企業が会社更生法の適用を裁判所に申請すれば、裁判所は大きな問題がなければ、いったんは受理します。その後、会社更生手続きの開始決定は、分かりやすく言えば「更生の見込みがないとは言えないかどうか」で判断します。
会社更生法第41条に開始決定の条件が定められています。具体的には、破産するよりも債権者への弁済を極大化できるか。そして、「更生計画案の可決の見込み等がないとはいえない」です。
会社更生法を適用するには規模が小さいのではという疑問もあるようですが、スポンサー企業が見つかるなら、申請が認められることに違和感はありません。また、「新電力では会社更生法は認められない」となると、新電力の顧客や与信している金融機関が不安に感じてしまうため、望ましくありません。