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 100年に一度の変革期が自動車業界に到来し、部品メーカーもCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応を急いでいる。業界の勢力図をがらりと変え得る変革の波。これを好機ととらえて躍進を狙うのが中堅タイヤメーカーのTOYO TIREだ。同社の研究開発トップである執行役員技術統括部門中央研究所長の下村哲生氏に技術戦略を聞くと、材料開発のスピード向上を優先事項に挙げた。

(聞き手は窪野 薫=日経クロステック)

・編集部注:記事内容は取材時点(2019年6月)の情報に基づきます。

下村 哲生(しもむら・てつお)。1963年生まれ。2005年に東洋ゴム工業(現:TOYO TIRE)に入社。2017年技術統括部門中央研究所長。2019年1月に執行役員に着任し、技術統括部門中央研究所長、先行工程開発本部長となる。(撮影:日経クロステック)
下村 哲生(しもむら・てつお)。1963年生まれ。2005年に東洋ゴム工業(現:TOYO TIRE)に入社。2017年技術統括部門中央研究所長。2019年1月に執行役員に着任し、技術統括部門中央研究所長、先行工程開発本部長となる。(撮影:日経クロステック)
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CASEの潮流は好機となるか。

 大きな変革点ではプレーヤーが変わる。変革で生じた隙間に食い込むことができれば、大きなチャンスが到来するはずだ。IT企業や電機メーカーまでもが自動車業界に参入しており、タイヤメーカーとしても接する相手が変わっている。

 他のタイヤメーカーに比べて、TOYO TIREは顔が広い。理由は、タイヤ8割・部品2割という事業構成にある。競合の多くがタイヤ専業の中、部品事業を手掛けている点は大きな強みだ。タイヤと部品を組み合わせて、車両の静粛性を向上するような提案が可能となる。

 電気自動車(EV)が全盛期を迎えるころには、乗り心地に対する要求はさらに大きくなるだろう。TOYO TIREはタイヤと部品の組み合わせで変革を乗り切りたい。

競争力の強化に必要なことは。

 材料開発のスピードをとにかく速めることだ。人工知能(AI)を使い、蓄積してきた莫大な量のデータを上手く処理して開発の効率を上げる。AIの活用で開発スピードを2倍以上に高められる。