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ユーグレナは、2021年4月に自社開発のバイオディーゼル燃料を3日間限定で一般のガソリンスタンドでテスト販売した。ミドリムシ(学名:ユーグレナ)を原料の一部とする燃料だ。環境・食料問題の解決を志して同社を創業した出雲充氏にとってバイオ燃料の実用化を進める大きな一歩だった。カーボンニュートラルという追い風が吹く中、戦略と思いを聞いた。(聞き手は窪野 薫=日経クロステック、吉田 勝、近岡 裕)

ユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏
ユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏
(写真:加藤康)
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 カーボンニュートラルでは、日本・米国・欧州が2050年に、中国が2060年に二酸化炭素(CO2)の排出量実質ゼロ(ネットゼロ)を目標に掲げています。しかし、パリ協定が掲げる温度上昇1.5~2.0℃以下を実現するには本来、30年までに実質ゼロを達成しなくてはなりません*1。日・米・欧の目標でも20年の乖離(かいり)がある。地球環境の保全のためには、相当な努力をしなければならない逼迫した状況です。

*1 パリ協定は「産業革命以前に比べて温度上昇を2℃以下、できれば1.5℃に抑える」ことを目標としている。

 とはいえ、カーボンニュートラルの実現に向けた具体的な議論が始まったという意味で、菅首相の宣言は意味深いものでした。バイオ燃料を扱う我々としてもありがたかったですね。

ゼロに等しい日本のバイオ燃料市場

 バイオジェット燃料の世界市場は2025年に1兆円、バイオディーゼル燃料は同7.5兆円を予測しています。2018年比でそれぞれ1000倍と1.7倍という規模の拡大です。当社は、藻類の1種であるミドリムシを原料の一部として製造したバイオ燃料で、成長可能性の高い両市場への参入を目指しています。

 注意してほしいのは、これが“世界市場”の数字であるという点。実は現在の日本のバイオ燃料導入量(自動車用)は総量でもわずか83万kL程度だからです。EUは同3000万kL、米国にいたっては1億kL以上と、桁が違います。日本市場は生産も一般利用もされておらずゼロに等しい。バイオ燃料という新しいエコシステム、新しいビジネスの創出が急務なのです。

 欧米や中国には既にバイオ燃料の市場があります。排出権取引は既にあり、炭素国境調整もこれから始まります。欧米中にはしっかりしたプレーヤー(企業)が存在し、市場の拡大余地も大きい。日本とは全く状況が違います。