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 政府の主導する2050年のカーボンニュートラル実現に呼応して、国内の企業は事業活動における脱炭素化やその実現を支えるための技術や製品、サービスの開発を加速させている。「世界中で気候変動への意識が高まっており、『電動化』は将来の事業のキーになる」と語るのは、コマツ代表取締役社長の小川啓之氏だ。同社はさまざまな電動建機の開発・実用化を着々と進めている。カーボンニュートラルを目指すための課題や新たな市場について小川氏に話を聞いた。(聞き手は吉田 勝、高市清治、構成は小林由美=facet)

 コマツは、2022年3月期までの中期経営計画「DANTOTSU Value - FORWARD Together for Sustainable Growth」において、「本業を通じたESG(環境・社会・ガバナンス)課題解決」を経営目標として掲げており、ESG課題の解決と収益向上の好循環による持続的な成長を目指しています。その取り組みの1つに環境負荷低減があり、具体的には30年までに二酸化炭素(CO2)排出量を10年比で50%削減するという目標を掲げています*1。再生可能エネルギー(再エネ)の使用率についても30年までに50%にまで引き上げます。これらはいわば必達目標です。

*1 単年度の建設・鉱山機械販売および顧客現場でのCO2削減効果とする。
コマツ代表取締役社長(兼)CEO 小川啓之
コマツ代表取締役社長(兼)CEO 小川啓之
おがわ・ひろゆき:1985年京都大学大学院修士課程修了、コマツ入社。コマツアメリカチャタヌガ工場長、執行役員茨城工場長、インドネシア総代表などを経て、2019年4月より現職。(出所:コマツ)
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CO2削減施策は順調に進捗

 CO2削減としては、サプライチェーン排出量*2におけるScope1の「燃料の燃焼」とScope2の「電気の使用」、およびScope3の「製品の使用」にフォーカスしています。当社の建設機械(建機)・鉱山機械においては、調達から生産、販売、製品使用、廃棄というライフサイクルの中で、生産工程におけるCO2排出量は約10%にすぎません。一方、製品使用フェーズでのCO2排出量は全体の約90%を占めており圧倒的に多いのです。

*2 サプライチェーン排出量 原材料調達から製造、物流、販売、廃棄まであらゆる事業活動に関係して出される温暖化ガスの総排出量のこと。スコープ1は燃料の燃焼などの事業者自らによる直接排出を、スコープ2は、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出を指す。スコープ1、2以外の間接排出がスコープ3で、製品の使用や廃棄、物流、人の移動など多岐にわたる。

 その製品使用時のCO2削減目標については、これまでもモデルチェンジによる改良やハイブリッド建機導入による燃費向上、機械稼働管理システム「KOMTRAX」を用いた低燃費運転の提案、ICT建機や建設生産プロセス全体をつなぐプラットフォームを活用したスマートコンストラクションによる顧客の施工最適化などに取り組んできました。

 その結果、順調に削減が進んでいます。20年度実績では、製品の使用に関する削減は14%減(10年比、以下同)を達成しました。なお、生産工程の削減については33%減、再エネ利用率は13%となっています。30年までには、燃費改善、製品改善で25~30%、製品の電動化や自動化による効率改善で10~15%、残りは顧客の施工最適化などソリューション改善で5~15%でトータル50%のCO2削減ができると見込んでいます。