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 2023年3月期から25年3月期まで3カ年の中期経営戦略「サテライトグロース戦略」を発表したKDDI。5G(第5世代移動通信システム)を中核に据え、金融やエネルギー、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの成長領域を伸ばしていく考えだ。非通信の中でも特に金融やエネルギー分野に注力する理由、成長分野に中間持ち株会社をつくる狙いなどについて、KDDI社長の高橋誠氏に聞いた。(聞き手は堀越 功=日経クロステック)

「特に金融分野はよく伸びている」と語るKDDI社長の高橋誠氏
「特に金融分野はよく伸びている」と語るKDDI社長の高橋誠氏
(撮影:加藤 康)
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今回の中期経営戦略では非通信分野において、特に金融とエネルギーに注力する方針を掲げました。

 前回の中期経営戦略(20年3月期~22年3月期)の期間中、金融とエネルギーの分野がよく伸びたからだ。特に金融分野はよく伸びている。住宅ローンやクレジットカード事業を中心にかなり成長している。

 今回の中期経営戦略(23年3月期~25年3月期)では金融分野の目標として、CAGR(年平均成長率)二桁成長を掲げた。20%くらいはいくのではないかと期待している。

金融事業では新中期目標として、売上高・営業利益や銀行口座数、クレジットカード会員数のCAGR二桁成長を掲げた
金融事業では新中期目標として、売上高・営業利益や銀行口座数、クレジットカード会員数のCAGR二桁成長を掲げた
(出所:KDDI)
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KDDIは、NTTドコモなど他社と比べてクレジットカード事業への参入が遅れました。それも含めて成長余地があるということでしょうか。

 当然それもある。クレジットカード事業は潜在ユーザーがたくさんいる。

NTTドコモやソフトバンクなども金融事業に注力する考えを示しています。

 我々は、銀行事業(auじぶん銀行)を持っている点が強みになる。世界では、銀行免許を通信事業者には与えず、簡易金融だけを認めるケースが多い。日本の場合、我々や楽天グループなどの通信事業者が銀行事業を持つ。

 ソフトバンクはヤフー事業(Zホールディングス)で銀行事業に取り組んでいる。ただソフトバンクの顧客から見ると距離感があり、密接に取り組んでいるように見えない。

 我々は金融事業を(中間持ち株会社である)auフィナンシャルホールディングスの傘下にそろえた。さまざまな金融事業をいかにクロスユースさせていくかが成長の源泉になる。

 今、金融の世界では「エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)」がはやり言葉になっている。顧客接点を持つ企業に金融機能を提供していく取り組みだ。当社もエンベデッドファイナンスを提供する。例えば電子商取引(EC)の加盟店など顧客接点を持つ企業に、金融機能を提供していきたい。

中間持ち株会社傘下の幅広い金融サービスを、クロスユースさせることで成長を目指す
中間持ち株会社傘下の幅広い金融サービスを、クロスユースさせることで成長を目指す
(出所:KDDI)
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エネルギー分野では、auでんきの契約数が拡大しています。

 22年4月時点で340万契約を超えるまで規模が拡大した。ただし21年と20年は日本卸電力取引所(JEPX)での価格急騰があり大変な状況だった。22年はボラティリティー(価格変動率)を抑えられる形態に変えたので、利益を出しやすい状況になった。電気を契約してもらうと、通信契約の解約も抑えられる点が大きい。

NTTドコモも「ドコモでんき」の提供を始めました。

 当社はauの顧客にauでんきを販売しているので、大きな影響は出ていない。