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 2023年3月期から25年3月期まで3カ年の中期経営戦略「サテライトグロース戦略」を発表したKDDI。第1回、第2回に続き、いかに成長分野である法人ビジネスを伸ばしていくのか、さらには料金プラン「povo2.0」の次の展開などについて、KDDI社長の高橋誠氏に聞いた。(聞き手は堀越 功=日経クロステック)

「あの時、さよならauと言われて結果的によかった」と打ち明けるKDDI社長の高橋誠氏
「あの時、さよならauと言われて結果的によかった」と打ち明けるKDDI社長の高橋誠氏
(撮影:加藤康)
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同一の物理ネットワーク上にカスタマイズした仮想的なネットワークをつくる「ネットワークスライシング」の時代が本格的に訪れると、帯域保証など「SLA(サービス品質保証)」を付けられるようになり、これまでの法人向けモバイルサービスになかった商材になりそうです。

 そう考えている。日本ではローカル5Gが企業の注目を集めているが、通信事業者が企業向けにネットワークをローカル5Gのように提供していく世界も見えてくる。

 企業が利用したいところに我々が基地局をつくり、品質を高めるためにネットワークスライシングを活用する。エリアごとにスライシングしたネットワークを企業に貸し出すような形だ。

この先、企業自らが周波数を確保するローカル5Gと、通信事業者が企業向けにカスタマイズしたネットワークを提供するネットワークスライシングの使い分けが整理されていくと見ています。

 そこまで行くと、通信料金だけ別に払ってもらうのではなく、通信があらゆるサービスに溶け込んでいく時代になるだろう。

中期経営戦略では、法人分野も大きな成長を見込んでいます。法人事業の中のどの分野がドライバーになりますか。

 「NEXTコア事業」注1)における(企業のビジネス変革を支援する)「ビジネスDX」領域が一番伸びている。法人分野では着実に二桁成長を狙っていきたい。

 法人分野は人を充てることで、それだけ利益が増えると見ている。コンシューマー系事業の成長とのバランスを取る必要があるが、社内の成長領域のシフトを進めていきたい。

注1)法人分野の重点領域としてKDDIが定義する3領域のこと。(1)ニューノーマル時代の多様な働き方を支援する「コーポレートDX」、(2)企業のビジネス変革を支援する「ビジネスDX」、(3)データセンターやコールセンターなどの「事業基盤サービス」の3つで構成する。

手堅く成長していく画が見えてきました。

 でも、言った通りにできなかった場合、あっという間に株価は下がってしまうだろう。今は気持ちを引き締めている。

決算会見で「povo2.0はすごい面白い」という発言がありました。実際に利用していても可能性を感じます。povoのような契約後に顧客へ寄り添うプランをメインブランドに広げてもよいのではないでしょうか。

 おっしゃる通り。うちは以前、「さよならau」注2)と言われた。あれは結果的によかったと思っている。あれから社内の雰囲気ががらりと変わった。仕組みで顧客を囲い込むのではなく、一からやり直そうとなった。

 povoのような(契約後に顧客へアプローチする)取り組みを「アフターコントラクト」という言葉を使って説明している。これはすごいノウハウになってくる。将来的にはauブランドやUQモバイルにも使っていきたい。

注2)KDDIが20年12月9日、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の有料サービスなどと組み合わせた新プランを発表したところ、SNS(交流サイト)で「au解約」や「さよならau」といった書き込みがあふれた。NTTドコモが新料金プラン「ahamo」を発表した直後のタイミングであり、複雑な割引の適用によって月額料金を安く見せる手法にも批判が集中した。

顧客ロイヤルティーを高める新しいやり方だと思いました。

 povo2.0の基本料金0円と、楽天モバイルの「0円」プランは違うと言っているのはそういう面だ。担当者は本当に苦労しているが、僕はやっていて、ものすごく面白い。