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時計を源流に持つ精密加工技術をプリンターなどに展開してきたセイコーエプソン。2020年4月に新社長となった小川氏は、強みを生かしつつも、技術起点の発想から脱却し、多様なアイデアが生まれる自由闊達な組織風土の実現と社会課題の解決を基にした事業創出を目指すと意気込む。(聞き手は吉田 勝)

写真:栗原克己
写真:栗原克己

 これまでのエプソンは、技術を進化させ、それが何に使えるかという技術オリエンテッドな発想で製品開発や事業を展開し発展してきました。しかしこれからは、まず社会課題をしっかり捉え、それに対してどう貢献できるかという視点を強めていきます。持続可能な社会、循環型経済をけん引していくために、何が我々にできるか、という発想で製品開発や事業展開していく方針です。

 高品質なプリントヘッドができたので、それを使って何ができるかを考えてビジネスにするのではなく、オフィスや学校の環境をどう変えていくか、そのために我々の持つ技術をどう生かせるかを考えるというように、物事の考え方を転換しなくてはなりません。具体的にどう実践していくかはこれからの課題ですが、まずは、そういう考え方でこれからはビジネスを展開するのだという決意を社内外にしっかり説明しアピールしていきます。

 我々の技術のコアは省エネルギー・省資源、小型軽量、高精度に集約できます。すなわち「省・小・精」です。いずれも持続可能な社会の実現に必要な技術で、間違いなくいろいろな社会課題の解決に役立つはずです。例えば、レーザープリンターをインクジェットプリンターに置き換えるだけでも省エネになります。そういう社会貢献を訴求できれば社員のモチベーション向上にもつながります。

 特に今の若い世代は、社会貢献への関心が強く、そういう仕事をしたいという人が非常に増えています。新型コロナウイルス感染症による今回の事態に対しても、「エプソンに何ができるかを考えましょう」という声が社員から上がりました。例えばマスク生産ができないかなど、若い社員たちから商売とは別にどうすれば社会に貢献できるかを考えたいとの声が多数出てきました。さらにそういう機運が若い人たちから、上の世代に広がっています。その辺りは、かつてとはかなり違いますね。