ここのところ、米中貿易摩擦の影響を聞かない日はない。その影響を早くから受けていたのが、米クアルコム(Qualcomm)によるオランダNXP Semiconductorsの買収である。2016年10月に両社間で合意したものの(関連記事)、中国の承認がなかなか下りず、2018年7月にご破算となった(関連記事)。それから1年弱が経過した2019年5月29日、騒動から立ち直ったNXPは17億6000万米ドル(約1920億円)の現金で、マーベル(バミューダ諸島Marvell Technology Group;事業会社は米Marvell Semiconductor)から無線通信半導体事業を買収することで合意した。来日したNXP社長のKurt Sievers氏に日経 xTECHが単独インタビューを行い、その意味などを聞いた。
(聞き手は大石 基之=日経 xTECH総編集長、小島郁太郎=日経 xTECH編集委員)
問:まず、Marvellから無線通信半導体事業を買収した理由を聞きたい。
Sievers氏 Qualcommと一緒になっていれば、我々(NXP)は、同社の無線通信半導体を手に入れることができていた。今回、Marvellからそれを手に入れられることになった。具体的には、WiFi(無線LAN)やBluetooth/BLE(Bluetooth Low Energy)、ZigBee、Threadの半導体を手にいれることができる。これらと、我々の強みである、プロセッシング、セキュリティー、アナログの各半導体を合わせることで、我々がフォーカスする3分野、IoT、産業、自動車で包括的なソリューションを顧客に提供できる。
Marvellから買収するのは、無線通信半導体事業のすべての資産である。この事業に携わる約550名の従業員もNXPに移籍する。彼らは米国のサンタクララ、インドのプネ、中国の上海で働いているが、全員がNXPの社員になる。
問:Marvell以外にも無線通信半導体メーカーは複数ある。その中でなぜMarvellを選んだのか。
Sievers氏 先ほど述べたように、すべての無線通信半導体製品を持っていることや、高い技術力豊富な設計資産(IP)に注目した。特に、今後、大きな伸びを期待できる、WiFi 6(IEEE 802.11ax)で業界をリードしている。我々が買収する無線通信半導体事業でMarvellは約3億米ドル(約330億円)/年の売り上げを持つ。2022年にはそれが2倍になると予測している。買収は各国の規制当局の認可などを経て、2020年第1四半期に完了する予定である。