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 コニカミノルタがオゾン装置メーカーのタムラテコ(大阪府東大阪市)との協業を深化させている。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐオゾン生成装置の部材調達の支援がきっかけだった。ただし、その部材調達の支援ではコニカミノルタに直接の利益はない。なぜ同社がこれまで取引のなかったタムラテコに手を差し伸べたのか――。協業に至った背景や今後の計画について両社に話を聞いた。前編では支援を主導したコニカミノルタ竹本充生氏の思いと狙いをお届けする。(聞き手は岩野 恵、吉田 勝)

 協業が始まったのは、2020年7月ごろ。新型コロナウイルスの拡大を防ぐオゾン装置向けのファンモーターの調達をコニカミノルタが支援するというものだった。同年10月には別のオゾン装置に使う特殊センサーの調達もコニカミノルタが肩代わりした。支援を主導したコニカミノルタ顧問の竹本充生氏は、こうした支援の原動力は同社の「困りごとを解決する文化」にあると説明する。

協業のきっかけは何ですか。

竹本氏:2020年5月14日のNHKの朝のニュース番組がきっかけだった。新型コロナウイルスを不活性化するオゾン発生装置の製造・販売を手掛ける企業としてタムラテコを紹介していた。コロナ禍で受注が殺到し、17万台の受注残があるという報道だった。今まで何百という会社を見てきた経験から、テレビに製造現場の様子が映し出されたのを見て直観的に「これは大変だ」と思った。

タムラテコでオゾン装置をセル生産する様子
タムラテコでオゾン装置をセル生産する様子
(出所:タムラテコ)

 大量生産するにはコンベアラインで整然と組み立てる方式が適している。ところが、タムラテコは作業台に製品を置いて組み立てるセル生産のようだった。この方式で何万台も組み立てるのは骨が折れる。コロナ禍という非常時に多くのお客さんが待っているわけで、「これは何とかしなければ」と感じた。

 役員の私がいきなり電話すると威圧的だと受け取られるかもしれないので、まずは生産技術開発担当者に連絡をお願いした。報道があったその日のうちに連絡を取ってくれた。ただ、当社以外からも色々な勧誘があったようで、当初は先方も疑心暗鬼だったと思う。

どのように信頼関係を築いていったのでしょうか。

 コニカミノルタでは日ごろから社内に向けて、「最も価値があるのは自己実現ではなく、パートナーに喜んでもらうこと」だと言っている。困りごとを解決するのは我々の文化だ。だから「タムラテコが本当に困っていることがあれば共有してほしい」と、リモートだけでなく大阪に直接出向いて伝え続けた。先方にも「コニカミノルタがそこまで言うのなら課題をぶつけてみよう」と思ってもらえたのだろう。報道から2カ月後の7月ごろにタムラテコから医療用の特殊ファンモーターが調達できないとの相談があった。

 そこで当社の調達部門でタムラテコのファンを調達すると申し出た。実はそのファンモーターを造っていたのは日本メーカーのフィリピン工場で、偶然当社の取引先でもあった。その工場に話を聞いてみると、新型コロナによるロックダウンで部品が入らない上に、従業員も出社できない状況の中、色々な会社からの問い合わせが重なって混乱していた。

コニカミノルタが調達を支援したファンモーター
コニカミノルタが調達を支援したファンモーター
(出所:タムラテコ)

 まずはそのフィリピン工場の課題解決に乗り出した。その際、第一に考えたのが、フィリピンの工場に手間を取らせないこと。いつ、どんなものが、なぜ必要なのか、部品調達と生産の話をしっかりと共有し、フィリピンの工場に代わって生産計画の立案や出荷の段取りをした。やがて工場の生産が回復し、必要なファンモーターをタムラテコにも供給できるようになった。

 当社にはサプライヤー向けの情報発信のノウハウなど調達に関する“虎の巻”がある。東日本大震災やタイの洪水の時も乗り切ったそのノウハウが今回も生きた。