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安い部材に合わせた設計で品質・価格を適正化

竹村氏:そこで、調達する部品や材料を安価なものから選択し、それを使いきることを前提とした設計や造り方にしようとしました。例えば、寸法のばらつきが大きいけれども非常に安い部品があったとします。従来の高品質な部品であれば抜き取り検査で品質を確認できますが、ばらつきが大きな部品では全数検査に切り替えます。

 不良品が少なからず出ますから購入量は増えますし、検査費用も必要となります。それでも検査方法や製造工程を工夫することで、検査費用と製造費用、部品価格の合計が安くなるならば、製品では必要な品質を満たしつつ価格は下げられます。この発想の大転換により、コストを4割減らしたのです。

なぜ従来は海外製品に対抗できる安価な部材を使っていなかったのですか。

竹村氏:日本では、自分の工程で完璧なものを造らないといけないという考え方が浸透しています。日本の品質を支えてきた良い面もある一方で、行き過ぎると全体最適が見えなくなります。デンソーでも日本の仕入れ先に対しては、不良品「ゼロ」を要求します。でも例えば、100個の納入部品の中で3個だけ基準を満たさない部品を提供してしまう取引先なら、その3つをはじく力が自分たちにあれば、取引先の選択肢は広がります。全ての工程を完璧にするのではなくて、製品を造るプロセス全体で見たときに問題がなければ良いのです。

海外メーカーは同様の課題を抱えていないのでしょうか。

竹村氏:自動車部品で世界一のドイツBosch(ボッシュ)はデンソーと比較して調達の能力が圧倒的に高いです。ボッシュは世界各地の調達部門に部材のベンチマークをする専任の部隊がいます。例えば中国の安い製品を見つけて現地で解析し、本社の製品設計へ迅速に反映する仕組みがあるのです。

 部材の知見にも大きな差があります。部材の品質をどのレベルにすべきか、現地にあった品質を判断できる力があります。ボッシュは現地で必要な部材を調達するために、現地の材料メーカーや加工メーカーをどのレベルまで引き上げればよいかを判断して指導しています。日本品質しか分からない日本企業はまねできないでしょう。

どうして日本品質から抜け出せないのでしょうか。

竹村氏:理由は幾つかあります。その1つが、日本の自動車業界ではトヨタ自動車やホンダなどが設計する高品質な部品が標準化してしまっていることです。トヨタやホンダは全ての部品について細部まで設計仕様を決めます。一方、それ以外の完成車メーカーは最重要でない部品については寸法や耐久性まで細かく規定しない場合があります。部品メーカーからの提案に任せて、集まった提案の中で最良のものを採用するのです。そうなると、デンソーならトヨタとの開発で培ったノウハウを基に提案することになるので、基本的に高品質になります。海外の大手完成車メーカーは、仕様書をしっかりと出します。

 「とにかく壊れる製品は駄目」という意識が日本の消費者に浸透していることも理由でしょう。中国ではエンジンのような肝心の部分は品質を重視するものの、ワイパーなどの付加機能は壊れても簡単に修理ができれば問題がないという意識があります。日本ではたとえ寿命で壊れたとしても不良品扱いされ、中国のようにはいきません。