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 日経ものづくりが実施した品質についてのアンケートでは、顧客からの過剰な品質要求に悩む現場の姿が浮き彫りになったアンケート結果はこちら。過剰な品質はコストをつり上げ、製造者と消費者の両方を苦しめる。なぜ現場が適切だと考える品質と実態が乖離(かいり)してしまうのか――。デンソー在籍時に品質を見つめなおし、新興国向けの製品コストを4割削減した竹村孝宏氏に話を聞いた。(聞き手は岩野 恵、高市清治)

取引先が要求する品質が過剰だという声があがっています。

竹村氏:日本全体で高品質を求める気質はあるでしょう。例えば、日本の自動車業界では世の中にある最高品質の製品を「ベンチマーク」とし、それを超える製品の開発を目指す文化が定着しています。結果的に素晴らしい機能や耐久性を持つ製品が日本から生まれました。ただ一方で、消費者が必要とする品質を超えた高価な製品も数多くあります。それでは安価な製品が多い海外市場で太刀打ちできないのです。

 約10年前、日本で造った自動車部品は中国の現地メーカーに全く勝てませんでした。価格が高過ぎたのです。そこで、前職のデンソー在籍時、私は海外で勝負できる製品を造る必要があると思い、低コストプロジェクト活動を始めました。

竹村孝宏氏
竹村孝宏氏

「念のため」の修正重なり、設計が硬直化

竹村氏:まずは品質を現地の要求に合う水準にすることを目指しました。現行の製品をベースとして、必要以上に高い品質を「落とす」というアプローチです。ところが、品質をどう落とすべきか答えが見つかりません。その最大の原因が、設計経緯のブラックボックス化です。

 設計を進める中では何度も設計変更が入りますが、実は「念のため」の修正も数多くあります。例えば、ある製品Aで不具合が出たとします。製品で対策するのは当然ですが、同じような構造を持つ製品Bは不具合がなくても直しているのです。こうした「本当に必要か分からない設計変更」を実際の製品では何十回、何百回も繰り返しています。

 そのため、いざ品質を適切な水準に下げる方向に設計変更しようとしても、機能や性能にどんな悪影響が出るか、もはや分からないのです。家電製品など自動車以外の業界でも、品質を落として価格を安くしたという事例はほとんど見つけられません。既存の製品設計を出発点に品質を落とすことは断念しました。

 次に世の中で流通している最低限の品質の製品を基準に、その品質を上げていくアプローチに変えました。そこで調査したのが、日本の半値くらいで売られている中国市場の製品です。安く造れる一番の理由は、使っている部品や材料でした。デンソーは製品のばらつきがかなり小さな範囲に収まるように、部材の品質のばらつきも抑えています。ある電子部品メーカーではこれに対応するため、デンソー専用品番があるほどです。その厳しい要求を満たそうとすると、部品や材料の価格は簡単に1.5~2倍くらいに跳ね上がってしまいます。