「いつかはaiwa(アイワ)のような家電メーカーをつくりたい」。かつて本誌にこう語った男が、aiwaブランドの使用権を獲得し、いよいよ表舞台である自社ブランド事業で勝負する。その男とは、携帯翻訳機「ポケトーク」、遠隔施錠端末「ビットロック」といったヒット商品を裏方として生み出した、EMS/ODM(設計製造受託)事業を手がけるJNSホールディングス 副社長 兼 JENESIS(ジェネシス、東京・千代田) 代表取締役 社長の藤岡淳一氏である。同社は2022年6月29日に、aiwaブランドを冠した第1弾商品を発表する。なぜ今、EMS/ODMよりも事業リスクが高いとされる自社ブランド事業に乗り出すのか。(大槻 智洋=ライター)
これまでEMS/ODM事業者として、携帯翻訳機「ポケトーク」やタクシー専用端末「JapanTaxiタブレット」などの製造を手がけてきました。社名は明かせませんが、学習塾やレストランなどでも当社製造品を使ってもらっています。


ソースネクストが開発したポケトークは、2018年ごろにヒット商品となりました。しかし、その後は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を大きく受けました。海外旅行者数が激減し、ポケトークの生産もガクッと減ってしまいました。半導体の供給が不足するなか、中国工場の労務費が上がり続けている点も当社には痛手です。JENESISは2022年2月期に経常利益こそ出したものの、売上高は35億円でした。コロナ禍前の2020年2月期は60億円でしたので大幅ダウンです。
それでも、我々は先行きをまったく悲観していません。ソースネクストはアクセルをベタ踏み状態だからです。同社は2022年2月に子会社ポケトーク(東京・港)を設立、2024年に上場させる計画だと聞いています。実はコロナ禍であっても欧米では販売が大きく伸びています注1)。このまま出張者や旅行者が増えていけば「POCKETALK(英語圏ブランド名)」はもっと売れていくでしょう。